今年は日中韓三つどもえのインド進出競争過熱も
包括的経済提携協定交渉に拍車
インドのマンモハン・シン首相が昨年末(2006年12月13-16日)に日本を公式訪問したことから、両国間の包括的経済提携協定(CEPA:Comprehensive Economic Partnership Agreement)交渉に拍車がかかるものと見られる。シン首相と安倍晋三首相は会談後『日印戦略的グローバル・パートナーシップ(Special Economic Partnership Initiative)』と銘打った共同声明を発表した。
インドと日本は、CEPAを梃子に向こう3年間に二国間貿易総額を現在の2倍の100億米ドルに拡大することを目指している。
日本のインフラ投資に期待
インドは日本が港湾、特別経済区(SEZ)等、インフラ領域に対する投資を拡大するよう望んでいる。これに対して日本政府は、政府開発援助(ODA:Overseas Development Assistance)を通じ、東西メトロ鉄道回廊(East-West Metro Rail Corridor)や西ベンガル州Kolkataにおける大量高速輸送システム(Mass Rapid Transit system)等の大規模交通インフラ事業を支援する意向を表明した。
シン首相に随行したKamal Nath商工相は甘利明経済産業大臣との間で、『デリー/ムンバイ複合一貫貨物回廊(Delhi-Mumbai multimodal freight corridors)』に平行して『産業回廊(industrial corridor)』を開発するため、合同専門チーム(joint task force)を設け、コンセプトやプロジェクトの内容に検討を加えること、『日本インド政策会議(JIPD:Japan-India Policy Dialogue)』を事務レベルから閣僚級に格上げし、両国間の経済協力協定(EPA:Economic Partnership Agreement)に関する最初のJIPD会議をニューデリーで開くこと等で合意した。
直接投資US$20億/機関投資家投資US100億期待
日本はインドにとって目下のところ米国とモーリシャスに次ぐ、第3の投資国だが、日本からの直接投資はその実1997-98年以降、下降線を辿って来た。しかしインドは今年日本から約20億米ドルの直接投資がなされるものと期待しており、シン首相の訪日中、野村證券幹部はNath商工相に対して日本機関投資家が今年インドに100億米ドル以上を投資すると見通した。
中印往復貿易目標US$400億
インフラ開発やテレコム事業に対するセキュリティー問題に直面する中国も対インド貿易・投資活動を一層活発化させるものと見られる。両国は2010年までに二国間貿易総額を、2005年の126億米ドルから400億米ドルに拡大することを目指している。既に複数の中国系家電会社や通信機器メーカーがインドに拠点を設けている他、中鋼集団公司(Sinosteel Corporation)や建機メーカーの三一重工等が投資計画を発表、上海電気集団はメガ発電プロジェクトに対する設備機器納入を目指している。この他、インドの国営石油会社Indian Oil Corporation (IOC)は、中国石油化工股分有限公司(中国石化/Sinopec:China Petroleum & Chemical Corporation)や中国中化集団公司(中化/Sinochem:China National Chemicals Import & Export. Corp)との提携を強化している。
中印、経済協力拡大戦略10項目で合意
第14回アジア太平洋地域経済協力会議(APEC)経済閣僚会議に出席後、中鋼/中国輸出入銀行(Export Import Bank of China)/中国石油天然気管道局(China Petroleum Pipeline Bureau)/山東電力建設第三工程公司(SEPCOIII Electric Power Construction Corporation)/華為技術有限公司(Huawei)/深セン中興通信(TCL Corporation)等の中国企業幹部57人とともに昨年11月20-23日の間インドを訪れた中国の胡錦涛国家主席は、シン首相と二国間の経済関係を強化する10ポイントの戦略に関して合意に達した。胡主席の訪問期間に両国は投資促進保護協定を含む13件の協定に調印した他、『インド中国地域貿易協定(India-China Regional Trading Arrangement)』締結に向け合同委員会を組織し、2007年10月までに報告書をまとめることで合意した。
韓国、日本に先んじて包括的経済提携協定調印も
一方、韓国もインドとのCEPA交渉に拍車をかけており、仮に韓国が先にインドとCEPAを締結するなら、韓国は日本に対して優位に立つものと見られる。韓国の指導者は既にインド・ビジネスマンに韓国を北東アジア市場開拓の拠点にするよう呼び掛けている。
こうしたことから今年は日本、中国、韓国三つどもえのインド市場進出競争が過熱するものと予想されますが、SEAnewsは読者とともにインドの経済、政治、社会動向をモニターしてまいります。
2007年1月 編集兼発行人 村上厚