SEAnews 1997-01-04 ArtNo.8894

【シンガポール】今回の総選挙は、与党が83議席中過半数を上回る47議席を無競争で獲得したことから、政権交代とは無関係な無風選挙と見られたが、選挙戦の半ばで米国政府の内政干渉問題が発生した他、後半には前官選議員のタン・ホンリャン氏と政府閣僚の名誉毀損問題を巡る非難の応酬も生じ、急速に熱気が高まった。
公共住宅改修計画に絡めた地方自治構想をスローガンに掲げた与党の選挙戦術は非民主的と断じたシャロン・ボーマン米国国務省報道官のコメントに、激怒したゴー首相は、外国の内政干渉に対する抗議を全国民に呼び掛けた。首相を初めとする政府首脳は、野党に対しても内政干渉に対する態度を明確にするよう迫った。しかし米国政府と事を構える不利を覚った政府はその後、野党工人党(WP)のジェヤレトナム書記長らと手を結んでチェンサン集団選挙区(GRC)から立候補した前官選議員のタン・リャンホン氏に砲火を集中する戦略に転換、内政干渉に対する抗議運動は不発に終わった。
英語教育受けたキリスト教徒が幅を利かす政府人事に中国語教育や儒教／道教文化を背景とした華人社会の現状を反映させるべきだとするタン氏に対して、ゴー首相は、この種の主張は多民族社会の融和を損なう危険な中華ショービニズムであり、チェンサンＧＲＣ選挙は首相とタン氏の対決の場であると宣言した。正副首相やリー・クアンユー上級相が陣頭に立った選挙戦略も奏功してか、結局リー・ヨクスアン教育相に率いられるＰＡＰ候補者チームが54.8％の得票率を上げ、勝利を収めた。首相によると、華人有権者が90％以上を占めるチェンサンＧＲＣにおける勝利は、政府の進める多民族／多言語／多宗教政策に対する国民の支持を反映しているが、45％の有権者が野党を支持したことは、同問題の根の深さを示していると言う。
一方、野党議員が3人に満たない場合、落選した野党候補者の中で最高得票率を上げた者に非選挙区議員の資格が認められる規定になっているが、首相は、チェンサンＧＲＣの野党立候補者中誰が同資格を得るかは、ＷＰの判断に委ねられると語った。(ST,LZ:1/3)