1996-11-13 ArtNo.8353
◆<星>ナットスチール、鉄鋼銘柄から電子銘柄に変身?
【シンガポール】ナットスチール株は、今年、電子事業の利益増が期待され、楽観派は買いに賭けるだろうが、電子産業への同社のエクスポージャーを理由に買いを控える投資家も有るかも知れない。このようにナットスチールが電子企業として論議されている事実は、同社の製鋼からの事業多角化の進捗を物語っている。
ナショナル・アイアン&スチール・ミルとして1961年8月に創設された同社は1990年5月にナットスチールに社名を変更したが、社名変更は見る間に競争力を失っていく製鋼事業から鉄鋼製品/建設資材の流通にシフトすることを明確にしたものだった。同シフトにより、同社は製鋼ビジネスの利益減少の影響を緩和できた。ほぼ同じ頃同社は事業多角化による危険回避策として電子下請事業に本格的に着手、数年間の損失計上後、電子部門は同社のスターとして期待されるまでになった。同社の1996年6月期中間決算報告を見ると、製鋼部門は昨年同期の740万Sドルの税引き前利益から19万7000Sドルの損失に転落、スチール製品/建設資材の流通を手がける産業部門の税引き前利益は81%増の2540万Sドル、電子部門の税引き前利益はほぼ3倍の1820万Sドルを記録した。来年以降についても、製鋼部門の沈滞が持続、産業部門は現状を維持、レジャー/不動産部門はまだ小規模のため、電子部門の貢献がさらに顕著になりそうだ。変動が激しい電子産業への依存が増す懸念についてナットスチールのアン・コンホア社長は、需要は好調で、単位諸経費は生産能力の拡大で低下しており、利益率は上昇するはずと語っている。上半期の電子部門の利益1820万Sドルは5億1100万Sドルの売上により達成されたもので、利益率は3.6%に過ぎない。単位諸経費がさらに低下したとしても、利益率はせいぜい倍増するだけだ。確かに6.5%の利益率は、ほとんどの競争相手を上回るものだが、投資家が魅力を感じるかは別問題だ。コンパックやIBMなどコンピュータ・メーカーはコスト管理重視から、在庫リスクを下請に移転させつつあり、このため、ナットスチールは自社の電子下請事業をサポートする倉庫施設への投資を拡大している。同社が電子下請事業に関われば関わるほど、資本支出も拡大していく。同社はすでに3億Sドル以上を同事業に投じており、近い将来に4億Sドルを超える可能性が有る。純有形資産わずか7億Sドルのナットスチールにとって、この投資額は安穏としていられるエクスポージャヤーとは言えない。結局は、経営者の手腕次第だろうが、電子部門を赤字から黒字に転換させた経営陣の手腕を信じるなら、ナットスチールは賭けがいのある投資対象といえそうだ。(BT:11/11)
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