SEAnews 1995-03-02 ArtNo.713

【シンガポール】シンガポール大蔵省商事調査局(CAD)は、ベアリング証券ロンドン本社が月曜に、ベアリング・フューチャーズ・シンガポール(BFS)のニック・リーソン前支配人(GM)兼主任トレーダーが違法行為を犯していた可能性が有ると申し立てたのを受け、リーソン氏周辺の調査を開始した。
ＣＡＤは、伝えられる詐欺行為に共謀者が有ったか否か、ＢＦＳが1月末時点で9000万Ｓドルの損失を出した際に何故警報装置が作動しなかったのか、と言った点を中心に捜査を行っているもようだ。ベアリング証券のジェームズ・ボックス地域代表取締役(MD)はリーソン氏の名目上のボスだが、アジア、北米地区の主任先物トレーダーを務めていたリーソン氏はロンドン本社に直接報告を行っており、ボックス氏はリーソン氏の活動に対して何等監督を行っていなかったようだ。89年にセツルメント・クラークとしてベアリング証券に入社したリーソン氏は、92年4月にセツルメント・スペシャリストの身分でシンガポールに転勤。1年もたたずにトレーダー、そして主任トレーダーに昇格した同氏は、その後もセツルメント業務を手掛けていたとされる。ＣＡＤは火曜にリーソン氏のアパートを捜査、また同僚らから事情聴取を行った模様で、マレーシア及びタイの警察に非公式な協力要請を行ったとされる。先週木曜にシンガポールから姿を消したリーソン氏は金曜にはクアラルンプルのリージェント・ホテルに一泊、その後シンガポールとは犯人引渡条約を結んでいないタイに向かったと見られている。またジョン・ホールズの偽名で香港経由でカナダ入りしたとの説も有る。同氏は土曜には28歳の誕生パーティーを共にできぬことを詫びるメモを同僚らにＦＡＸしている。ＢＦＳの職員らは2日に一度は一緒にパブ巡りをするリーソン氏を、面倒見のいいボスと評している。同事務所の1ダースほどのトレダーは一昨年は13カ月分のボーナスを支給され、昨年についてもも18カ月分のボーナスが支給されるはずだったが、凍結されたと言う。(BT,ST,LZ:3/1)