【コロンボ】注目を集めた先月のスリランカ総選挙は、マヒンダ・ラジャパクサ前大統領が率いるスリランカ人民戦線(SLPF:Sri Lanka People's Front)の圧勝に終わった。SLPFは、全国会議席の三分の二近い145議席を獲得した。
差し迫った問題は、ラジャパクサ新体制下のスリランカの外交政策の性格と方向性だ。アイランドは近い将来中国またはインドに傾くのだろうか。コロナ危機の経済的影響、破壊的な債務負担、インド洋で進行する地政学的鬩ぎ合いは、スリランカの対外関係にどのような影響を及ぼすだろうか。最も重要なのは、ラジャパクサ政権が外交政策の方向性にどのようなシグナルを与えるかだ。
選挙直後の最も興味深い進展の一つは、新たに任命された外務大臣の職務と機能。外相は、既存の二国間協定を再評価し、それに含まれる条項や条文が地域経済に有害な影響を与える可能性があるかどうかを調査する『特別任務』を与えられている。そのような責任は、これまでこれほど明確な条件で外相に付与されていなかった。
もう一つの注目すべき点は、若手のタラカ・バラスリヤ国会議員を『地域協力担当大臣』に任命した政府の決定だ。この種の閣僚ポストは以前の政府にはなかった。バラスリヤ議員選考の重要性は、彼の国会演説から見て彼の関心の中心が経済と金融に関わるトピックに置かれていると言う事実からも窺える。地域協力担当大臣として、彼の職務には、アジア諸国との強力な経済貿易関係の構築、南アジア地域協力連合(SAARC:South Asian Association for Regional Cooperation)およびベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC:Bay of Bengal Initiative for Multi-Sectoral Technical and Economic Cooperation)諸国との絆の強化が含まれる。
ジャヤナス・コロンベージ退役海軍大将の外務省次官への起用はもう一つの改革点だ。この種のポストはこれまで外交官が務めて来た。
これらの新人事は重要だ。地域協力担当国務大臣の創設により、インドや中国、その他の近隣アジア諸国との関係強化への注力が再び促進されるものと見られる。中国共産党員とマヒンダ・ラジャパクサ新首相の間に存在する親密な関係も、ゴタバヤ・ラジャパクサ/マヒンダ・ラジャパクサ両氏との関係を深めるためにインドのナレンドラ・モディ政府が2015年以降にとった取り組みと同様に特徴の一つになるだろう。
しかし、ラジャパクサ政権が、SAARC、BIMSTECや東南アジア諸国連合(ASEAN)のメンバーを含むアジアのパートナーとの関係を強化する上で、最も重視しているのは、病めるスリランカ経済を引き上げることである。
こうした点は、ロシア国際問題評議会(RIAC: Russian International Affairs Council)に提出された共同執筆記事の中で私が概説した主張でもある。それは友好的な対外関係を確立する『階層的アプローチに基づく同心円』と定義される外交政策の方向性を描写したもので、そこでは、インドや他のアジア諸国などの地理的隣国がスリランカの外交政策立案における政策立案者の主要な注目点とされている。
コロンベージ退役海軍大将は外務次官就任直後、「2009年から2020年8月までの間に525隻以上の戦艦がスリランカに寄港した。内インドが110隻でトップ、中国は最下位の40隻だった」と述べ、インド洋における中国の海軍のプレゼンスに対する恐怖を和らげることに努めた。コロンベージ次官はさらに続けて、「大統領は、戦略的安全保証に関する限り、インド・ファースト・アプローチを採用することを明言した。つまり、スリランカがインドにとって戦略的な安全保障上の問題になることはできず、そうあってはならず、そうなることもない。」と語った。
しかし、スリランカにとって焦眉の急務は、債務負担を減らし、投資を促進、沈滞した経済を迅速に起動させることだ。モディ政権のラジャパクサ一族との関係構築の努力にかかわらず、プロジェクトの実行と投資の面でニューデリーが成果を上げられなければ、経済的要請によりスリランカが再度中国に接近することは目に見えている。
圧倒的な勝利は、外交政策立案の面でSLPPに大きな余裕を与えたが、外国指導者とラジャパクサ一族の個人的関係の構築に加え、投資及び経済援助(短期的に提供可能な優遇金利での商業借款と援助)の度合いが、今後5年間のスリランカの外交政策の最大の決定要因になるだろう。
【ニュースソース】
New Dimensions in Sri Lanka’s Foreign Policy
○世界は一つ: