【ムンバイ】マレ(モルジブの首都)の対中接近とイスラム過激派の社会政治的伸長が、この地域におけるインドの国益を危うくする可能性がある。ほんの二週間ほど前にモルディブに危機が生じて以来、域内におけるインドの可能な役割に関してインドの世論はハッキリ分裂している。ある者は、域内の巨人としての偉容を保ち、この島国への中国の浸透を阻止するために砲艦外交を展開することを提案、他の者は、こうした提案を記念碑的な馬鹿げた行為と評し、観望姿勢を採るか、ソフトパワー・メカニズムを応用する代案を提起している。
とは言え、両陣営とも、最近のモルジブの変事の深層がどのようなものであれ、『インド・ファースト』から『ルック・チャイナ』に重心が移動したと言う厳しい現実を認めている。モルジブには(現在の地政学からすれば)、この二つの選択肢しかなさそうだ。今垣間見られた物語の筋書きは、中国とその海上シルク・ロードに、そして我が国南部海辺の安全に、さらにはインドのマレ介入の歴史に、象は巧みに注目を避けているものの、スポットライトが当てられていることに驚かされる。
実際のところ、モルジブは今や、南アジア、あるいは恐らく全世界から西アジアのISIS(Islamic State of Iraq and Syria)軍への戦士供給の人口比率最高を誇る押しも押されもされぬ、積極的スンニ派イスラム国である。
マウムーン・アブドル・ガユーム政権の30年に及ぶ成果に乏しい統治後(その間1988年にはインド軍により彼に対するクーデターが鎮圧された)、モルジブは2008年に初めて民主的に大統領を選出した。モルジブ初の民主的指導者モハメド・ナシード大統領は、余りに民主的と見なされ、僅か4年でその地位を追われた。ガユーム政権の下、青年時代の大半を牢獄で過ごし、『モルジブのマンデラ』と称されたナシードは、高等裁判所判事を脅迫した廉で、その後13年間再び投獄された。
ナシードを追い落とし、2013年以来大統領の職に就き、一部のオブザーバーから蛇のような地政学的権謀術数家と評されているアブドッラ・ヤーミンは、就任以来中国の歓心を買い、サウジアラビアとの関係を深めることに多くの時間を割いている。中国は経済面で、サウジアラビアはイデオロギー面で、それぞれ関係強化に努めて来た。数十年前までモルジブ島民は実際のところイスラム教シーア派とスンニ派の違いを認識せず、両者はかなり納得のいく解釈がなされ、島の伝統とイスラムが融合していた。しかし、今では、島で受け入れられているのは、サウジアラビアのサラフィズムだけである。憲法は、この国の大統領になれるのはスンニ派のイスラム教徒だけと明確に述べている。モルジブ島民は地理的距離にもかかわらず、サウジに率いられるスンニ・ジャガノートに身を献げることを誇りとし、目的としているように見える。そんなことで、2016年には湾岸の不安定化を図ったとの理由でイランとの外交関係を、また2017年にはカタールとの外交関係も断った。
これら全ての理由を無視できないのは、インドによる如何なる介入も、インド洋におけるインドの影響力に反する利害によって、同島における反イスラムの修辞に織り込まれ得るからである。モルジブに制裁を科すと言う他の方策は単に副作用を併発させるに過ぎない。ネパールのインドに対する敵意は、そうした試みの明確且つ新鮮な例と言える。その反面、モルジブ人の間には、中国を経済植民地主義者と見なす声が存在し、2017年に群島の一部の島々を買収しようと言うサウジに対する抵抗も存在した。
モルジブには短期解決策はなく、軍事介入や制裁は明らかに泥沼化を招くだけである。内外の利害によって反イスラムの修辞に織り込まれ得るような如何なる介入も回避すべきである。インド外交の武器庫には多くの武器が存在し、インドはそれらを用いる機を忍耐強く待たねばならない。
【ニュースソース】
Maldives: India must wait and watch
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