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2016-10-09 ArtNo.45884
◆書評:聖霊のバプテスマ(回心と復活)




 パウロが三回目の宣教旅行を終え、地中海沿岸各地のヘレニスト信者の代表団を率いてエルサレムに赴いた西暦56年頃は、熱心党の中でも過激なシカリ派の武闘が過熱し、エジプト人ヨシュア(ギリシア語にすればイエス)に率いられる反乱軍が、オリーブ山から決戦に出てエルサレムを占領する計画を立てたが、ローマ総督フェリックスにより一掃された(イエスは仏教徒だった?)。ちなみにイエスの弟、シモンも熱心党の一員だった。

○ユダヤ戦争前夜




 旧約ダニエル書の70週の預言に基づき、西暦33-34年頃に救世主が出現しイスラエルを再興すると言う期待が高まったことが、反乱頻発の背景になっており、エルサレム教会の信者も、イエスがこの頃再臨するものと信じていたようだ。パウロは、≪テサロニケの信徒への手紙一≫の中で、キリストの再来は、彼が生きている間に実現し、その時には、キリストにある死者すなわち殉教者がまず初めによみがえり、次に、パウロを含む生きている信者と殉教者がいっしょに雲の中に一挙に引き上げられ、空中でイエスと再会すると説いている。しかし、こうした期待は裏切られ、西暦66年と70年に発生した二度のユダヤ戦争により、エルサレムは完全に破壊され、神殿も炎上した。
 西暦62年に殉教した小ヤコブに代わって首座を務めた弟のシモンに率いられ、エルサレム教会の信徒は、ローマ軍に包囲される寸前に、市外に脱出したものの、大祭司カイアファの屋敷に隣接して設けられていた本拠地を失ったことから、教会は次第に忘れ去られた。
 パウロは、一時代を終焉させたユダヤ戦争に向かって歯車が回転し始めたちょうどその時、随行団を引き連れ、小ヤコブの下に赴いたことになる。その場に居合わせた長老たちは、パウロに『ナジル人の誓願』の立ち会い人を務め、4人の請願者に代わって儀式の費用を負担することにより、身の潔白を証明するよう提案。パウロは同提案を受け入れた。

○千人隊長、パウロを救出




 七日間に及ぶ儀式がほぼ完了しようとした時、アジア州出身のユダヤ人たちが、「この男は、律法を無視するように至る所で説き、挙げ句の果てにギリシア人を連れ込んで聖所を汚した」と叫び、パウロを境内から引きずり出した。同時に神殿の扉は、一斉に閉じられ、パウロは暴徒により殺されかけたが、千人隊長クラウディウス・リシアに率いられるローマ兵が駆けつけ、パウロを救出した。(使徒21:27-32)
 パウロが境内から引き出されると同時に、神殿の扉が全て閉じられたと言う記述により、使徒行伝の著者は、神殿警備当局と襲撃犯の間で、当初から襲撃の手はずが打ち合わせされていたことを暗示している。しかし間髪を入れず、ローマ兵が駆けつけ、パウロを救出したことから、パウロの側もそのことを予期して準備を整えていたものと見られる。
 パウロに「お前は、最近反乱を起こし、四千人の暗殺者を引き連れて荒れ野へ行った、あのエジプト人ではないのか(使徒21:38)」と尋ねた千人隊長は、群衆やサンヘドリン(最高法院)の議員にパウロがその考えを語る機会を提供しただけでなく、パウロ暗殺の陰謀を察知すると歩兵200人、騎兵70人、槍兵200人から成る護送隊を組織し、パウロをカエサリアのフェリクス総督の下に送り届けた。(使徒23:33)

○アグリッパ二世官邸に幽閉




 すると、フェリクス総督は、パウロを暫時ヘロデ・アグリッパ二世のカエサリア官邸にあずけた。ちなみにアグリッパ二世には、ベルニケ、マリアムネ三世、ドルシラと言う三姉妹がおり、一番下のドルシラはフェリクス総督の妻だった。ドルシラは6歳になる前にコンマゲネの王子エピファネスと婚約したが、将来の花婿がユダヤ教に改宗するのを拒んだため、同婚約は破談、14歳で今度は割礼の条件を満たしたエメサの首長(シリア王)アジズスと結婚した。しかしその美貌に魅せられたフェリクス総督の懇請を受け、西暦54年頃、アジズスと離婚し、おそらく16歳でフェリクス総督の第二夫人になった。とすれば、元々皇后アントニア(クラウディウス帝の母)の解放奴隷だったアントニウス・フェリクス総督はユダヤ教に改宗し、割礼を受けた可能性がある。使徒行伝の著者も『フェリクスは、この道についてかなり詳しく知っていた(使徒24:22)』とコメントしている。
 結局、パウロはカエサリアで2年間拘留されたが、友人達と交流する自由を認められた。またフェリクス総督は、たびたびパウロを呼び出し、妻のドルシラとともに救世主イエスについて話を聞いたと言う。しかし使徒行伝の著者は、「パウロを2年間も拘留し続けたのはユダヤ人の歓心を買うためであり、たびたびパウロを呼び出したのは、賄賂をせしめる下心があったため(使徒24:26-27)」と注釈をつけている。どうやらパウロには、賄賂を贈る潜在能力があったようだ。

○新総督も、パウロにVIP待遇




 二年後に着任した、ポルキウス・フェストゥス新総督は、ヘロデ・アグリッパ二世とその妹ベルニケを含むカエサリアの要人(VIP)が一堂に会する盛大なパーティーを催し、その席でパウロに自身の信仰に関して語る機会を与えた上、望み通り皇帝に上訴することを認めた(使徒25:13-26:32)。
 パウロは海路ローマに護送されたが、ルカを初めとするヘレニスト信者が随行しており、パウロは一囚人として護送されたのではないことが窺える。千人隊長クラウディウス・リシアも、フェリクスおよびフェストゥス両総督も、さらにはヘロデ・アグリッパ二世も、パウロに格別の配慮を示しており、VIPとして遇していたことが分かる。
 パウロは第二回伝道旅行の途中ギリシア南部の都市コリントで書いたとされる≪ローマ信徒への手紙≫の中で、エルサレム訪問後、ローマに赴きさらにイスパニアに向かう計画を明らかにしており、第三回宣教旅行でアジア州おける布教を終え、エルサレムに赴く方針を決めた際も、エフェソスにおいて「わたしはそこへ行った後、ローマも見なくてはならない(使徒19:21)」と述べている。したがって早くもこの頃からローマにおける布教に照準を合わせていたことが窺える。実際のところ、パウロは、皇帝への上訴を口実に首尾よく目的を達成したと言える。あるいは、ローマで斬首されることも計画の一部だったのだろうか。

○回心と復活




 パウロは、兵営の門前で群衆に語った際(使徒21:40-22:21)、最高法院で審問を受けた際(使徒23:1-10)、フェリクス(使徒24:1-21)及びフェストゥス総督(使徒25:6-12)の審問を受けた際、そしてフェストゥス総督の謁見室でアグリッパ二世やカエサリアの要人を前に語った際(使徒25:23-26:32)に、いずれもパウロ神学の核心を成す『回心』と『復活』について確信を得た経緯を重ねて説明したが、これは彼自身がイエスから聖霊のバプテスマを受けた実体験の表明と言える。
 パウロの『回心』と『復活』の実体験を洞山了价(どうざん・りょうかい807-869)禅師の『五位偏正』の理論に当てはめれば、『普遍性:イエスの顕現』と『特殊性:ステファノの殉教とヘレニスト信者に対する迫害』の間から到達する悟り、したがって第五位の『兼中到』に相当すると言える。
 洞山の弟子曹山本寂(そうざん・ほんじゃく804-901)禅師は、『兼中到』とは『有語(うご)』でも『無語(むご)』でもない、両者から解放され、真正面から要所に突入することと説明。洞山は、究極の真理を自己実現する機(はたらき)を通じて真理を実感もしくは、体感することと説いている。




 ある日、一人の僧が洞山禅師に「蛇が蛙を呑み込む時、助けるべきでしょうか、それとも助けぬべきでしょうか」と尋ねた。洞山は「もしお前が助けるなら、お前の両目は節穴だ。もし助けないならお前は影も形もない」と答えた。≪洞山語録≫
 ハワイ州立大学マノア校で哲学を講義した張錘元(チャン・チュンユアン1907-1988)教授は、この一風変わった深遠な表現を通じて、洞山の内的体験(つまり悟りの境地)を目の当たりにすることができると述べている。それによると、洞山のこの答えは、『兼中到』のアプローチに基づいており、彼は蛙の命を救うことからも救わないことからも解放されていると言う。<以下次号>





○『聖霊のバプテスマ』とは一体何か
 ヨハネ福音書の弁証法に従うなら、
【テーゼ】 『人は、人の子の証しを受け入れ、聖霊のバプテスマを受けることにより永遠の命を得られる(ヨハネ5:24)』。
【アンチ・テーゼ】 しかし、『地上の人間は、決して天から来たものの証しを理解できない(ヨハネ3:32)』。
それでは、地上の人間はどうして永遠の命を得られるのか。
【ジン・テーゼ】 『地上の人間は始めに神と共にあった言葉(ヨハネ1:1)に立ち返り、神が全き真理であることを自ら覚知すればよい(ヨハネ3:33)』。
文益禅師は「お前は慧超だ」と答えることにより、慧超自身の内に秘められた『真の自己(声前の一句)』を突きき付けたのである。
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