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2015-01-20 ArtNo.45419
◆書評:聖霊のバプテスマ(神の義)




 彼らは、わたしの民の傷に平易な手当を施し、平和がないのに、『平和だ、平和だ』と言っている。(エレミア6:14)
 義に飢え渇くものは幸いなり。何故なら彼らは満たされるからである。(マタイ5:6)

○神の義の現成
 パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は12月21日に発表した恒例のクリスマス・メッセージの中で、『義に飢え渇くものは幸いなり。なぜなら彼らは満たされるからである』と言う山上の垂訓(マタイ5:6)を引き、「私がクリスマスに願うことは正義がこの世の隅々まで現成すること、それに尽きる。パレスチナの人々に正義がもたらされないなら、如何なる平和の努力も失敗する他ない」と警鐘した。





○エレミアの預言
 アッバス議長は、さらに『平和など存在しないのに、彼らは、平和だ平和だと言う』と言う旧約エレミア書の一節(6:14)を引用し、「国際社会は、和平交渉の再開を取りざたしているが、クリスマスを前にした世界状勢や、ベツレヘムの現状は、口先だけでは決して平和は実現しないことを示している」と指摘した。
 ユダ王国がバビロニアに滅ぼされる前夜、エレミアは、エルサレム北部に居住していた自分の出身部族ベニヤミン族に対して、腐敗し、神から見放されたエルサレム城内ではなく、エルサレム南部郊外まで避難するよう指示した。エレミア書第6章14節は、その際の託宣の一部分で、イスラエル北王国がアッシリアに滅ぼされた後も、悔い改めないユダ王国に対する神の怒りが込められている。
アッバス議長は、エレミア書のこの一節を引用することにより、イスラエルのみならず、全世界に対し、今こそ神の義を明らかにする時であることを示すとともに、イスラエル北王国やユダ王国の過ちを繰り返さぬよう警鐘している。





○パレスチナ人の中に生きるイエスのメッセージ
アッバス議長は、「我々は、愛と正義そして平和のメッセンジャー、パレスチナ人イエスの誕生を祝う。2000年以上昔、ベツレヘムの小さな村から発せられた彼のメッセージは、今や数億の人々のしるべとなっている。彼のメッセージは、正義を希求する人々、世世代代この聖地を守って来た我々パレスチナ人、そしてガザ同胞のために祈る我々祈祷者の中に生き続けている」と述べ、『神の義』には、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒、その他一切の宗教徒、あるいは無神論者の別がないことを強調している。





○実りの報酬
 釈迦がインドの菩提樹の下で、『天上天下唯我独尊、草木国土悉皆成仏』と証見し、イエスがユダ郊外で聖霊のバプテスマを施す運動に着手してから、二千有余年を経た今日、依然として世界各地で紛争が生じているが、永遠の命に至る実りを刈り取るために蒔くものは、その時点で、実りの報酬、永遠の命を手に入れることができる。なぜなら、初めに神とともにあった言葉に立ち返り、天上天下唯我独尊と証見したものにとって、この世は本来成仏しているからである。御国の現前とは、人々の心の目を開かせ、天上天下が本来一つであり、草も木も国土も悉ごとく皆成仏していることに気づかせることに他ならない。(キリスト教の起源P.277)





○パレスチナは全世界のロール・モデル
 パレスチナ自治政府とヨルダンが共同で国連安保理に提出した2017年末までにイスラエルの占領を終結させる決議案は、あるいは米国の拒否権に直面するかも知れず、また評決に付されることさえないかも知れない。その際は、被占領地住民や難民のこの世における塗炭の苦しみは、続くことになるが、イスラム教徒やユダヤ教徒、あるいはキリスト教徒の別のないパレスチナ国家の実現を心に誓ったものは、その時点で実りの報酬、すなわち永遠の命を手に入れ、この世に居ながらにして神の国に生きることができる。イエスをロール・モデルとし、永続する平和を実現するために、希望を抱き、正義を求めて前進するパレスチナ人は、領土紛争や宗教紛争に直面する世界の他の地域の人々のロール・モデルになるだろう。





○『聖霊のバプテスマ』とは一体何か
ヨハネ福音書の弁証法に従うなら、
【テーゼ】  『人は、人の子の証しを受け入れ、聖霊のバプテスマを受けることにより永遠の命を得られる(ヨハネ5:24)』。
【アンチ・テーゼ】  しかし、『地上の人間は、決して天から来たものの証しを理解できない(ヨハネ3:32)』。
それでは、地上の人間はどうして永遠の命を得られるのか。
【ジン・テーゼ】  『地上の人間は始めに神と共にあった言葉(ヨハネ1:1)に立ち返り、神が全き真理であることを自ら覚知すればよい(ヨハネ3:33)』。
文益禅師は「お前は慧超だ」と答えることにより、慧超自身の内に秘められた『真の自己(声前の一句)』を突きき付けたのである。(p.237)
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【参照】






○エレミア
 エレミヤは旧約聖書の主要な預言者の一人。エレミヤは、伝統的に《エレミヤ書》、《列王記第一》、《列王記第二》、《哀歌》の著者とされ、彼は、書記であり弟子でもあったバルク・ベン・ネリヤの補佐と監修の下にこれらの書を著したものと信じられている。エレミヤは、ユダ国ヨシヤ王の第十三年、紀元前626年からエルサレムが陥落し、ソロモン神殿が破壊された紀元前587年以降までの間積極的に伝道活動を展開したものと見られる。この間はユダ国の5人の王、ヨシヤ、ヨアハズ、エホヤキム、エホヤキン、ゼデキアの治世に重なる。エレミヤの最後の預言は紀元前574年(3350 HC)とされ、この時、彼はバルク・ベン・ネリヤに伝道の任を託した。





○ベニヤミン族
 ベニヤミンはイスラエルの始祖ヤコブの12番目の子で、古代イスラエル12部族の一つベニヤミン族の始祖。ペリシテ人の圧迫からイスラエルを助け出したサウル王はベニヤミン族の出身だった。サウル王が戦死し、後継者も暗殺されると、ユダ族のダビデが王位につき、ベニヤミン族もダビデを支持した。ソロモンの子でダビデの孫に当たるレハブアムの即位に際して、北部の十部族がダビデ王家から離反し、イスラエル北王国を樹立した際、ベニヤミン族は、ユダ族とともに、ユダ王国を組織、紀元前586年にユダ王国がバビロニアに滅ぼされるまで、ダビデ王家に対する忠誠を維持した。ちなみにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2014年12月現在)もベニヤミン族の出身とされる。

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