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2010-10-25 ArtNo.44105
◆シン首相、ルック・イーストに本腰
【ニューデリー】インドのManmohan Singh首相は今週、東京、ハノイ、クアラルンプル、そして来月はソウルを歴訪する。ハノイではインド・東南アジア諸国連合(ASEAM)首脳会議に、ソウルでは主要20ヶ国(G20)首脳会議に、それぞれ出席、マレーシアとの初の二国間首脳会議も予定されている。シン首相が首相としてクアラルンプルを訪れるのは今回で2度目。おそらく他の国との二国間協議もなされる見通しだ。シン首相の東京訪問は4度目だが、二国間自由貿易協定が調印され、かつ民生用核開発協力領域における合意がなされるなら、極めて重要な訪問になる。
ビジネス・スタンダードが10月22日報じたところによると、向こう数週間に行われるシン首相の東アジア諸国歴訪は、20年前にP V Narasimha Rao首相が掲げたインド版ルック・イースト政策の新たなページを開くものになりそうだ。
インドが東アジア諸国との関係強化に乗り出したのは冷戦終結後のことである。1997年のアジア金融危機を機に、インドは市場統合と、広域経済協力に向け一歩を踏み出したものの、シン首相が2005年にインドASEAN自由貿易交渉を開始するまでは、インドとASEAN諸国との関係は限られた範囲にとどまっていた。
東アジアや東南アジア諸国との関係に進展が見られなかったのは、インドが主要大国、取り分け米国と中国、および隣国パキスタンとの関係に心を奪われていたためと見られる。米国、中国、パキスタンとの関係にさしたる改善が見られぬ中、シン首相は、東アジアおよび東南アジア諸国との関係強化に改めて軸足をシフトした。
○ベトナム/マレーシアとの関係強化
2011年共和国記念日(Republic Day)の主賓としてインドネシア大統領を招聘したのに続き、シン首相がクアラルンプルとハノイ訪問を決めたことには、ASEANの主要メンバーとのより緊密な関係構築を目指すインド政府の外交姿勢が反映されている。
インドはこれまで侮辱的とも言えるほど、ベトナムとの関係を軽視して来たが、最近の国防相の訪問に続くシン首相の訪問で、東アジアのライジング・スター、ベトナムとの経済関係の進展が期待される。
マレーシアについても同様で、Najib bin Tun Abdul Razak首相の就任を切っ掛けに、関係の緊密化が図られており、過去数十年にわたる不安定な関係から抜け出し、新たな一章が記される可能性が高まっている。奇異とも言える反インド姿勢を貫いたマハティール・モハマド首相およびその後継者アブドラ・アハマド・バダウィ首相の在任中は、インド叩きがクアラルンプル市民の日常的スポーツとされて来た。しかしナジブ新首相はポジティブな姿勢を見せており、新たな二国間関係の形成が期待される。
○日印Cepa調印に赤信号
しかしながら、首相訪日を間近にして、険悪化する対中関係への対応に追われる菅政権内から、待望の包括的経済協力協定(CEPA:Comprehensive Economic Partnership Agreement)の内部精査が完了しそうにないとの予期せぬ消息が伝えられた。
ビジネス・スタンダードが10月23日伝えたところによると、Nirupama Rao外務次官は23日記者会見し「交渉は完了したが、日本側は依然として『内部協議が必要』としている」と語った。同次官は「困難な自由貿易交渉が妥結しただけでも、満足すべきこと」と述べ、平静を装った。
日本とのCEPA調印は、ハノイにおける30日のインド・ASEANサミットおよび東アジア・サミットに臨むシン首相の立場を大幅に強化するはずだった。しかし、日本には分厚いCEPA書類を翻訳する十分なスタッフが存在しないようだ。
アジアの強国、世界最大の経済体の1つに数えられる日本との健全な提携関係樹立は、シン首相の手柄になっただけでなく、急速に台頭する中国を頼みとしまた脅威と感じるASEAN諸国の重要パートナーの地位を得ることにつながったはずである。シン首相は東アジア・サミットの前日、中国の温家宝首相と会談するが、同首脳会談の経済的成果は何ら期待できそうにない。
○中国の対抗馬としてのインドに期待
ジャワハルラル・ネール大学国際学部のG V C Naidoo氏によると、中国は東アジア・サミットに依然照準を合わせているが、最近の中国の攻撃的姿勢に域内諸国が警戒心を高めている。
米国が不況から立ち直ることができない今、インドは将来中国に対抗しうる唯一の国と見なされ始めている。インドが中国と対等の力をつけるにはなお長期間を要するが、日本や韓国等の規模の大きい経済体との貿易投資協定締結は、こうしたインドのポジションを補強するのに役立つ。
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