【ニューヨーク】過去10年、中国は中印国境付近の軍用/民用インフラの建設に拍車をかけて来たが、ロータン峠のインド側は、辺境統治に対するインド政府の意欲と能力の欠如を暗黙の内に物語っていた。しかし、ここに来てインド側にも変化が生じ、滑走路や前哨基地の建設に加え、6月には終にロータン峠にバイパスを設けるトンネル工事が開始された。
デカン・ヘラルドが8月10日、New York Timesの報道を引用し伝えたところによると、嶮しいヒマラヤ山脈の稜線に位置するホワイト・ナックル峠はチベット語で屍の山を意味し、毎年ここを通過しようとして命を落とすものが数ダースにのぼる。一年の半ばが雪で覆われ道路が不通になるこの地域は長期にわたる中印紛争地帯で戦略的に重要な前線であることから、数万のインド軍が駐屯している。
ピルパンジャル地区に全長5マイルのトンネルを掘る野心的プロジェクトの完成には5年を要する。気象条件に関わらずチベット高原に接するラダクに何時でもアクセスできるようにする別に数本のトンネル工事も進められている。
インドと中国の2521マイルの国境線の大部分が紛争地域であり、中国がインド国境付近のインフラ開発を加速していることに、インドは神経を尖らせて来た。ニューデリーを拠点にする政策研究センター(Centre for Policy Research)の中印関係アナリストBrahma Chellaney氏は、「インドが遅まきながら目下試みているのは、国防に不可欠な兵站線の構築と改善である」と語る。同氏によると、中国はチベットに新たな鉄道、空港、ハイウェイを建設、何時でもインド国境にその兵員を増派できる体制を整えており、その結果、中印国境は、今や印パ国境以上に不安定な状況に陥っていると言う。