【ニューデリー】原子力局(DAE:department of atomic energy)傘下のHeavy Water Board (HWB)は、厳しい競争を勝ち抜き韓国、中国、米国に核グレードの重水(nuclear-grade heavy water)を輸出、国際原子力貿易市場に確固としたプレゼンスを築きつつある。
ヒンドゥー・ビジネス・ラインが6月7日伝えたところによると、HWBは2009-10年には韓国水力原子力会社(KHNP:Korea Hydro and Nuclear Power Company)からこれまで最大規模の重水1100万トンの輸出注文を獲得した。
これ以前には米国企業Spectra Gases Incから4400トン、やはり米国のCambridge Laboratories Incから4.6トンの重水輸出注文を得ている。
一方、アンドラプラデシュ州Hyderabad拠点のNuclear Fuel Complex (NFC)も、国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)から、トルコ原子力局(TAEK:Turkish Atomic Energy Authority)に対する燃料装置エンドキャップ溶接ユニット(fuel element end-cap welding unit)の製造・供給・試運転契約を、受注した。
インドはまたプロットタイプ核反応炉を輸出する準備を整えており、カザフスタンや東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部の国が関心を表明している。
HWBは、特殊化学品や他の安定同位体(stable isotopes)領域でもサプライヤーとしての能力を培っている。
重水は原子力発電所や研究用反応炉の中性子減速体や冷却剤として用いられ、高濃度の重水素同位体を含んでいる。
インドは1998年5月の核実験前の1990年代後半にも韓国と中国に重水を輸出した経験を有するが、さしたる量ではなく、また単発で継続的なものではなかった。しかしここに来て受注量が増え、輸出先に米国や韓国等、主要な国際市場が加わった。
またNFCが厳しい国際競争に勝ち抜き燃料装置ユニットの輸出契約を獲得したのは、一大突破と言える。DAE筋によると、この種の特殊契約、取り分けウィーン拠点のIAEAが仲介する契約の将来性は大きい。
インドは『AHWR300-LEU』と命名された自前の『低濃縮ウラン使用改良型重水炉(AHWR-LEU:Advanced Heavy Water Reactor-Low Enriched Uranium)』を目玉商品に原子力設備輸出市場への参入を図っている。トリウムを燃料に用いた同核反応炉は、小規模送電網を保持する国をターゲットにしている。目下カザフスタンと『AHWR300-LEU』の設置に関する交渉を進めている他、アジアの複数の国も『AHWR300-LEU』の導入に関心を表明している。ちなみにインドネシア、ベトナム、フィリピン、タイ等の国は原子力発電導入計画を既に発表している。