2010-05-14 ArtNo.43397
◆欧州金融危機再燃と中国の信用引き締めで鋼材値下がり
【ニューデリー】欧州における金融危機の再燃に加え、中国政府が信用引き締めを通じ投資の過熱を抑制したことから、投機的ブームに乗じて事業を拡大して来た鉄鋼産業は逆風に直面している。
ファイナンシャル・エクスプレスが5月10日伝えたところによると、欧州の金融危機は欧州域内の鉄鋼市場に打撃を与え、独立国家共同体(CIS)諸国やトルコは鋼材の輸出先を、欧州以外の地に転換せざるを得ない状況に立たされている。この結果、新興市場における競争が過熱し、鋼材の値下がりが生じる。もしこうした現象が孤立的に発生していたなら、その影響は限られたものにとどまったと見られるが、中国における鋼材需要の軟化が重なり、相乗効果が生じた。
中国政府の信用引き締め政策は投機的な不動産投資熱を冷却化させるだけでなく、産業界の事業拡張計画も鈍化させるものと見られる。投機的需要のみならず、実質的需要も軟化するなら、その影響は極めて大きい。
他のコモディティー同様、鋼材価格の下降は避けられないが、その一方で鉄鉱石やコークス用炭の価格は現在の高水準を維持するものと見られ、鉄鋼メーカーはマージンの大幅な縮小に直面することになる。
コークス用炭のスポット価格はFOBベースでトン当たり250~275米ドルと、トン当たり200米ドルの既存契約価格を大幅に上回っている。中国鉄鋼メーカーがオーストラリアのコークス用炭市場から大挙撤収するようなことがない限り、コークス用炭価格が現在のレベルから下降する可能性は少ない。
高いスチール・スクラップ価格、強いルピー相場、高い海運コスト等は、鉄鋼業界の収益性と価格交渉力に影響を及ぼす。一部の要因は有利に働く場合もあるが、この種の優位は、世界市場の潮流とスポット市場の変動に左右され、維持することは難しい。
仮に中国政府が鋼材輸出を制限し、同時に中国の鉄鉱石とコークス用炭の需要も軟化するなら、鋼材価格とマージンを維持することができる。このため地元鉄鋼業界は中国の動向に注目している。
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