【ニューデリー】銀行不良資産(NPA:non-performing asset)の一層の拡大が予想される中、インド政府は特殊目的会社(SPV:special purpose vehicle)を設け、銀行のNPAを買い取る可能性を検討している。
インディアン・エクスプレスが11月3日報じたところによると、SPVの設立は、大蔵省と関係当局が、支払い不履行の蔓延から金融部門を保護する予防措置として検討しているもので、P Chidambaram蔵相が4日に銀行界トップと会談した際にも同案件が取り上げられたものと見られる。
世界的金融危機が銀行界のNPAを拡大させ、それに伴う銀行の貸し渋りが金融危機を一層深刻化させると言う悪循環を生じさせている。このためSPVにNPAを買い取らせ、NPAの枷から解放することにより、銀行に貸付を拡大させようと言うもの。これにより銀行のバランスシートが改善し、市場の流動性も拡大する。
2008年7-9月期四半期ICICI Bankの純不良債権(NNPA:net non-performing advances)は、前年同期の2970.94クロー(US$61.26億)から4232.93クロー(US$87.28億)に42.47%、純貸付(net advances)に占めるNNPAの比率、即ち純不良資産比率(net NPA ratio)は1.43%から1.91%に拡大した。グループ企業を含めた連結では1.60%になっている。しかしState Bank of India(SBI)の純不良資産比率は2008年6月の1.42%から9月の1.34%に改善、HDFC Bankのそれは0.57%となっている。中央銀行RBIのデータによれば、インド国内で営業する全ての銀行の2007-08年度の純不良資産比率は1%だった。
公共金融・政策全国研究所(NIPFP:National Institute for Public Finance and Policy)と大蔵省経済問題部(DEA:Department of Economic Affairs)が共同で発行しているNIPFP-DEA調査報告書(NIPFP-DEA research paper)最新号によると、向こう6ヶ月間にNPAが拡大し、流動性の逼迫や倒産も増加する恐れがある。
不良資産買い取りSPVの組織構成は、インド資産再建会社(Arcil:Asset Reconstruction Company India Ltd)と類似したものになると見られる。Arcilには、SBI、IDBI Bank、ICICI Bank、Punjab National Bankが合計66.02%出資、インド政府は直接には出資していない。
大蔵省は、これ以前に国内銀行の自己資本比率(Capital Adequacy Ratio)を12%のレベルに維持する方策を講じるとしていた。