【ニューデリー】これまで脂肪種子の高騰を抑制するために奮戦して来たインド政府は、ここに来て食用油の国際価格が暴落、その影響が国内市場にも波及する中、脂肪種子農民を保護するため食用油輸入税に見直しを加えるべきか、国内消費者の利益を優先すべきか判断に窮している。取り分け州議会選挙と国会選挙が間近に迫っていることから、食用油輸入税の見直しは政府にとって悩ましい問題と言えそうだ。
ビジネス・スタンダードが10月30日報じたところによると、食用油の国内価格は、政府のインフレ対策や原油値下がりの影響を受け、ここ数週間に急落、底値に達している。パーム油や大豆油等の植物油は、バイオ代替燃料として用いられることもあり、原油と同様の値動きを見せ、国内価格は過去2ヶ月間に25~30%下降した。こうした中でインド溶媒抽出産業協会(SEAI:Solvent Extractors Association of India)は、食用油の輸入税引き上げを要求している。しかしパーム油や大豆油に新たな税を課すなら消費者の負担を増し、やっと冷却の兆しが生じたインフレを再度過熱させることになる。
来年5月には国政レベルの総選挙があり、それに先だって11月と12月には6州の州議会選挙も控えている。これらの州には脂肪種子主要産地のマドヤプラデシュ州も含まれている。農民と消費者のバランスを維持することは、政府にとって至上命令だが、この時期に政治的リスクを犯す勇気が果たして政府にあるだろうか。
インド政府は食用油が急騰し、インフレの懸念が高まった今年3月食用原油に対する輸入税を撤廃し、精製した食用油に一律7.5%の輸入税を課した。これ以前には精製された調理油に52.5%、植物油原油に40~45%の輸入税が課されていた。
インドは年間1100万~1200万トンの調理油を消費、この内500万トンを輸入し、700万~800万トンを国内で生産している。大豆やピーナツ等の夏播き脂肪種子の搾油は来月半ばにピークを迎えることから一層の値下がりが予想され、ラビ(rabi:春先収穫作物)の作付けにも影響を及ぼすのではないかと懸念されている。