2007-06-01 ArtNo.39539
◆ラジャスタン州製油所計画でUS$50億歳入損失も
【ニューデリー】インド政府は、Oil and Natural Gas Corporation (ONGC)及びその子会社Mangalore Refinery and Petrochemicals (MRPL)に対しラジャスタン州に年間原油処理能力400万トンの製油所を設け、英国の石油探査会社Cairn Energy PLCが発見した油田の原油を処理する可能性を検討するよう求めた。しかし同計画を実行するなら大蔵省は50億米ドルの歳入損失を覚悟せねばならない。
インディアン・エクスプレスが5月31日報じたところによると、Cairn India Ltd(CIL)は2009年初から年間750万トンの原油生産を開始する予定だ。しかし石油天然ガス省は同生産量を2分の1に減らし、ONGC/MRPLの新製油所に処理させる可能性を検討している。見積もりコスト8000クロー(US$19.51億)の製油所が完成するには少なくとも4年を要するが、石油天然ガス省は、ラジャスタン州の油田からグジャラート州までパイプラインを敷設する認可をペンディングしている。同省は炭化水素総局(DGH:Directorate General of Hydrocarbons)に、日量15万バレルの生産量を8万バレルに減らし、生産期間を8年から15年に引き延ばす可能性を検討させている。
しかし減産を実行すれば、生産分与協定に基づく政府の取り分は当初見積もりの68億8000万米ドルから39億米ドルに、法人税収入は19億1300万米ドルから10億5400万米ドルに、ロイヤルティー収入は23億7200万米ドルから13億1600万米ドルに縮小する。したがって政府の合計収入は111億6000万米ドルから62億7000万米ドルに、50億米ドル近く減少する。
そればかりではなく、製油所を採算ラインに乗せるには、州政府も用地を無料で提供し、付加価値税(VAT)/販売税/入境税を全て免除する必要がある。
興味深いことにONGC/MRPLは、当初、年間処理能力750万トンの製油所の建設を検討したが、採算が見込めぬとの理由で計画を放棄した経緯がある。アンドラプラデシュ州Kakinadaにおける同規模の製油所プロジェクトも、規模の経済性を実現する上から1500万トンに拡張されている。
関係筋によると、製油所で処理した石油製品はラジャスタン州内で買い手を見出す必要がある。さもなければ付加価値税と販売税免除の恩恵を享受できない。しかしラジャスタン州内の石油製品需要は250万トンまでで、同州内でそれ以上販売することはできない。また仮に州外に持ち出せば、付加価値税と販売税が課されるため、採算は望めない。
それだけではない。ラジャスタン州では水が不足しており、当局は限られた水資源を飲料に用いるか、製油プロジェクトに用いるか、選択を強いられることになる。
また仮にラジャスタン州の油田で生産された原油を引き取るためのアレンジが2009年までに完成しないなら、インド政府はCairn Indiaに多額のペナルティーを支払わねばならなくなる。原油の生産は2009年半ばに開始されるが、新製油所の稼働は関係認可取得後、少なくとも48ヶ月を要すると言う。
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