2005-10-07 ArtNo.36454
◆インド、半導体チップ製造で中国・台湾の支配に挑戦
【バンガロール】世界の半導体チップ製造基地になると言うインドの夢は、水や電力網、道路網の不備に祟られ、まだ実現していないが、チップのデザインや検査、包装を手掛ける新会社が続々誕生、チップの国内需要も8億米ドルに達しようとする中で、ライバルの中国や台湾と伍して世界の2200億米ドル・チップ市場のシェアを競う臨界質量が形成されつつある。
エコノミック・タイムズがロイター電を引用し10月5日報じたところによると、Palaniappan Chidambaram蔵相は、チップ・シミュレーション/検査会社Tessolveの開所式の席上、「半導体チップ・レースへの参加が多少遅れたからと言って苦にすることはない」と語った。Tessolveはカルナタカ州Bangalore市内のチップ・デザイン会社約80社に奉仕するために設立された。
半導体チップの製造工場“fab”の建設には30億~40億米ドルの投資を必要とする。インド半導体業者協会(ISA:Indian Semiconductor Association)のPoornima Shenoy会頭は、「中国や台湾の半導体産業は政府の支援を得ており、インドがファブを建設する際の成否の鍵もその辺に存在する」と指摘した。
情報技術製造業者協会(MAIT:Manufacturers Association of Information Technology)のVinnie Mehta常務理事(ED)によると、インド政府は、米国拠点のIndian Equipment Manufacturing Company(IEMC)コンソーシアムを含め少なくとも7件のファブ建設提案を手にしている。
チップ・メーカー、Advanced Micro Devices Inc(AMD)はインドにファブを設ける可能性を検討している。AMD IndiaのAjay Marathe社長は「AMDは低コスト・チップをインドで製造することを検討しており、時機が来たらこの方面の専門ノーハウを紹介し、インド半導体産業の成長に貢献したい」と語った。
Dayanidhi Maran情報技術相は去る6月、世界のトップ・チップ・メーカー、Intel Corpが4億米ドルを投じてインドにチップ組み立て・検査施設を設けると語ったが、インテルは同消息を確認していない。
クレジット・カードや携帯電話から医療機器に至るまで様々な装置に搭載されている半導体チップは、一般にファブレス・メーカーによりデザインされ、台湾や中国の製造業者により受託製造されている。
ISAのRaj Khare会長は、「半導体産業は極めて長い食物連鎖(food chain)を成しており、一枚のチップには益々多くのソフトウェアが組み込まれている。インドは170億米ドルのソフトウェア産業を強みとすることができる」と語った。バンガロールのスタートアップ広帯域ビデオ・チップ・デザイン会社を買収して組織した地元ファブレス・チップ・デザイン会社Broadcomの采配を握るKhare氏によると、インド企業はコンセプトとデザイン双方を手掛けており、これにはシリコン・ウエハへのサーキットの組み込みが含まれる。
ワイヤレス通信機器メーカーのQualcommは昨年1900万米ドルを投じてVLSI(超大規模集積回路)設計会社Spike Technologiesを買収した。インド第3位のソフトウェア会社Wipro Ltdもチイプ・デザイン・アウトソーシング・サービスを手掛けている。インドにはこの他、アンドラプラデシュ州Hyderabadを拠点にする生え抜きのファブレス・チップ会社MosChip Semiconductorを初めとして、Intel、AMD、Infineon Technologies AG、Freescale Semiconductor Inc、Philips、Samsung Electronics Co Ltd、Applied Materials、Magma Automation等の半導体企業が拠点を設けている。英国のARM Embedded Technologiesや米国拠点のOpen-Siliconも今年バンガロールにオフィスを設けた。
Open Siliconの共同創設者Satya Gupta氏は、「来年20~25種類の異なるタイプのチップを市場に投入する。ハイテク・チップはグローバル化ではなく、益々ローカル化し、ニッチなニーズに照準を合わせつつある」と指摘する。
インドには、ウエハー・ファブリケーション技術開発業者Vignani、ウエハー包装会社SPEL Semiconductor Ltd、ビデオフォーン・プロットタイプの開発を手掛けるIttiam Systemsと言ったスタートアップ企業も誕生している。
アウトソーシング・コンサルタント会社NeoITのAvinash Vashistha重役(MD)は、「インドが台湾と競争するまでには、なお時間を要するが、ファブを設けることにより、デザイン・サービス関連の需要を創出することができる。ファブを設ける目的は中国や台湾と競争することではなく、この種の波及効果をもたらすことにある。携帯電話、TVボックス、コンピューターの地元市場も恩恵を受けられる。地元製チップはこうした市場に肌理の細かい配慮を払うことができる」と指摘した。
ISAのKhare氏によると、インドの電子産業は昨年115億米ドルに達し、年率23%の成長を遂げている。このためインドにファブを設けることは経済的センスを有する。リスク分散の観点から言っても、インドは全ての代替条件を備えていると言う。
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