【コルカタ】アンドラプラデシュ州Hyderabadおよびウッタルプラデシュ州Noidaに400人のエンジニアを雇用、集積回路(IC)デザイン・ツールの開発を手がけるMentor GraphicsのWalden C Rhines会長は、インドにおける技術者の雇用コストが2010年には、米国のそれに肩を並べると予想した。
インディアン・エクスプレスが1月7日伝えたところによると、Mentor Graphicsは1500人のエンジニアの27%をインドで雇用しているが、Rhines会長は「我々がインドを長期的開発拠点に選んだのは、決して低コストな人材が存在するためではなく、人材の優秀さに注目したためである」と述べ、雇用コストの急騰をさして懸念していないと語った。同氏によると、半導体業界に就業する米国エンジニアの給与は、Indian Institute of Technology (IIT)等を卒業し、同種の業務を手がけるインド人のそれを25-35%上回るが、インドにおける高いインフラストラクチャー・コストを考えれば、その種の格差は何ら魅力とするに当たらない。加えてインド半導体産業エンジニアの昇給率は15-20%にのぼり、米国の3%を遙かに上回る。このため2010年には両者の給与格差は消失すると言う。
しかしSynopsys (India) Pvt LtdのPradip K Dutta社長兼MDは、「半導体産業における米国とインドの給与格差が消失するのはそれほど早くない」とコメントした。同氏によると、両国のシニア・エグゼクティブ・クラスの給与はあるいは同水準になるかも知れないが、エントリー・レベル・エンジニアの場合、米国における給与はインドの10倍にのぼる。他の情報技術(IT)産業と異なり、給与格差は多国籍半導体企業がインドに開発センターを設ける際の決定的理由ではない。とは言え依然として付随的理由の1つではある。取り分けエントリー・レベルやミッド・レベルのエンジニアに関してはそう言える。給与格差がなくなれば、一部のBPO(business process outsourcing)サービス会社やITサービス会社は店じまいせねばならないが、半導体産業についてはその心配はない。何故なら半導体業界にとって給与コストはそれほど重要な要因ではないからである。Dutta氏は「国内に存在する多くのエンジニア養成学校が、世界の半導体企業がインドに開発センターを設ける主要な理由」と付言した。
Texas InstrumentsのHarish M重役(ビジネス・デベロプメント)も、「ASICプラットフォームのアプリケーション・チップ・デザインの開発には6-12ヶ月の時間と500万-1000万米ドルの投資を必要とする。このため半導体企業は最良のタレントを求めている。我々がインドを拠点に選んだのは、高度な技術を備えたエンジニアが存在するためで、決してサラリーだけが理由ではない」と語った。