2003-10-15 ArtNo.32131
◆インド自動車産業、タイとの自由貿易協定巡り分裂?
【ニューデリー】インド政府がタイと取り交わした自由貿易協定(FTA:free trade agreement)は、国内自動車産業を真っ二つに分断、同業界の見通しは複雑化する様相を呈している。
エコノミック・タイムズが10月11日報じたところによると、日系乗用車メーカーとモーターサイクル・メーカーは概ね両国のFTA締結を歓迎しているが、コスト面の優位を梃子に輸出市場の開拓を目指す自動車部品業界は、タイがこの方面で戦略的ハブの役割を演じることに懸念を抱いている。同様に非日系自動車メジャーも、平等な競争環境を歪めるものと見なしている。
インド政府は今後さらにシンガポール、ラテン・アメリカ諸国、ASEAN、南アフリカとFTAを結ぶ予定だ。貿易力学上に抜本的変化が生じることから、自動車業界は将来の計画を如何に立てるべきか悩んでいる。
協定の詳細は明らかでないが、自動車部品がFTAの適応対象になることは、ほぼ確実と見られる。FTAパッケージの下、当初は低関税による市場アクセスが認められ、一定期間後に関税はゼロに引き下げられる。しかしパッケージの詳細は関係国の交渉により決定され、交渉の場では双方が希望リストを提起して、折衝することになる。
しかし業界は交渉の予想外の迅速さに唖然としている。自動車部品製造業者協会(ACMA:Automotive Component Manufacturers' Association)やインド自動車製造業者協会(SIAM:Society of Indian Automobile Manufacturers)の一部に抵抗が存在したにも関わらず、中国の攻勢を封じ込める水際作戦を重視するインド政府は、交渉の早期妥結を図った。
これに対して国内業界は、FTAに賛成するものも反対するものも、関税率の詳細が明らかになるまでコメントを控える姿勢を見せている。
タイに製造拠点を有するスズキ、ホンダ、トヨタと言った日系自動車メジャーは、FTA下に関税が引き下げられれば、輸出入双方の恩恵を享受できる。タイはインドから空路約3時間足らずで、デリーとチェンナイ間の所要時間にほぼ等しい。したがってタイはインド市場開拓の最も有効なハブと言える。
しかしインド部品メーカーにとっては、その恩恵はそれほど確かではない。例えば原料の輸入関税はインドの場合25%であるのに、タイは10%に過ぎない。このため両国間の関税がゼロになれば、インドの部品メーカーはタイの同業者に太刀打ちできない。このためACMAは、自動車部品をFTAの適応対象から除外するよう求めて来た。
しかし当初タイとのFTA締結に強く反対していたHyundai IndiaのBVR Subbu社長は、「商工省方面との協議の結果、それほど懸念するには当たらないとの結論に達した」とコメントした。
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