【ニューデリー】肥料局(DOF:Department of Fertilisers)が燐酸価格問題を早期に決着させないなら、燐酸二アンモニウム(DAP:di-ammonium-phosphate)の製造を手掛ける国内肥料会社10社が操業停止に追い込まれる見通しだ。
インディアン・エクスプレスが5月22日報じたところによると、これら10社には、Gujarat State Fertilisers Company/Godavari Fertilisers/Hindustan Lever Chemicals/Manglore Chemicals/Fertiliser and Chemicals Travancore Ltd(FACT)が含まれる。これらの企業は、年間1億2000万米ドル近い燐酸の輸入価格が毎年5月に見直されることを想定しているが、政府に代わって外国輸出業者との交渉を担当しているインド肥料業者協会(FAI:Fertilisers Association of India)は、先月の交渉が決裂した後、話し合いを再開していない。
FAIのViren Kaushik理事長(director general)によると、もし今月中に問題が決着しないなら、国内のDAP製造会社は操業停止を強いられるが、そうなれば7-9月のカリフ(kharif:初冬収穫作物)栽培シーズンを控えた数百万の農民が深刻な打撃を被る。これらの農民は国内における調達が不能になるだけでなく、DAP国際価格高騰の影響を受けざるを得ない。政府もまたDAP輸入に対する高額の補助を行う必要が生じる。
伝えられるところによれば、先月行われた交渉の席上、モロッコのOCP、ヨルダンのJPM、チュニジアのGTC、レバノンのLebanon Chemicals等、海外の燐酸供給業者はトン当たり400米ドルの価格を提示したが、FAIはトン当たり312米ドルでの購買を希望、両者の話し合いは物別れに終わった。DOFは関税委員会の提案に基づき提示価格を330米ドルに引き上げることを認めたものの、海外サプライヤーは同価格の受け入れも拒絶した。米国方面のサプライヤーは昨年のトン当たり341.50米ドルの価格もあまりに低すぎるとし、早期に交渉を打ち切っている。
肥料及び化学品担当国会諮問委員会メンバーのPinaki Mishra氏によると、肥料業界は6月半ばまでの原料在庫を保持しているに過ぎない。このため5月中に決着しないなら、インドはDAPの深刻な供給不足に陥る。政府の態度は、肥料業界に対しても農民に対しても極めて冷淡と言う他ない。第8次五カ年計画の作業グループは、輸入依存を15%引き下げるよう提案したが、第10次五カ年計画に際しては新たな燐酸肥料工場を設けることは提案されなかった。政府には、エネルギー、運輸、資金等のインプット・コストの上昇を配慮する意思もない。
現在DAPの国内生産能力は671万2000トンで、実際の生産量は669万7000トン。別に86万トンが輸入されていると言う。