【ムンバイ】米国市場へのアクセスがほとんど断たれたことから、インド鉄鋼メーカーは挙って中国市場に殺到している。往時の対米鉄鋼輸出が100万トンを超えたのに対して、中国市場の需要は50万トンと、小規模だが、急成長を遂げている。
エコノミック・タイムズが2月22日伝えたところによると、インド鉄鋼企業は中国の他、東南アジア、アフリカ、欧州、オーストラリア市場の開拓にも積極的に取り組んでいる。
インド最大の熱間圧延コイル(HRC)輸出業者、Essar Steel Ltd(ESL)の今会計年度第3四半期の輸出は5万6000トンと、昨年同期の12万5000トンに比べ55.5%の落ち込みを見た。ESLのJ Mehra重役(MD)によれば、米国の輸入規制で生じた世界的な鉄鋼製品の余剰が挙ってアジアに流入しているため、極めて厳しい競争環境になっている。したがってインドの鉄鋼輸出が再び100万トンの大台に乗るにはなお時間を要する見通しだ。
輸出需要が減退したことから国内鉄鋼会社は国内販売の拡大に努めており、ESLの第3四半期の国内販売は28万6000トンと、前年同期の25万4000トンに比べ13%、前四半期に比べ31%拡大した。しかし第3四半期の同社のHRCの生産量は33万6000トンと、前年同期の38万5000トンに比べ13%下降した。
インド最大の民間鉄鋼会社Tata Iron and Steel Company Ltd (Tisco)の第3四半期の輸出は147.35クロー(US$3022万)と、前年同期の177.3クロー(US$3636万)を下回った。同社は米国が反ダンピング税を課す以前から中東や中国市場の開拓を図ってきた。Tiscoスポークスマンは同社の輸出は常に営業額全体の15%前後を占めているとしている。
主要な亜鉛鍍金鋼メーカー、Jindal Iron and Steel Company(JISCO)も中国市場の開拓に努めている。しかし同社の場合は、引き続き対米輸出を行っており、中国輸出はこれに追加された形になっている。目下のところ米国はまだ亜鉛鍍金鋼とステンレス・スチールを反ダンピング税の対象に含めていない。米国は、暖冷房システムやエアコンの製造原料として亜鉛鍍金鋼を輸入している。JISCOは月間4万5000トンを生産、内2万8000トンを輸出している。JiscoのRaman Madhok重役(MD補)によると、同社はトン当たり300~450米ドルの価格で注文を得ている。最新の統計数字は、中国における需要が約50万トンに達することを示しており、同社は改めて中国市場に対する関心を高めている。
また中国向け輸出の輸送コストは米国向けに比べ割安になっている。これは中国から湾岸諸国に赴く輸送船が帰路にJiscoの製品を持ち帰るためで、インド/中国航路の平均輸送料はトン当たり10~16米ドルと言う。