2000-01-05 ArtNo.21438
◆<星>シーゲートの工場閉鎖は電子産業の転換期を象徴
【シンガポール】世界最大のディスク・ドライブ・メーカー、シーゲート・テクノロジーがトゥアスのディスク・メディア工場を当初のスケージュールより数ヶ月早く今月3日までに閉じたことは、シンガポール電子産業の新時代を告げるものと言える。
長らくシンガポールの電子製品輸出のトップの座を維持してきたHDDは、つい最近まで国産非石油製品輸出全体の70%を占めたが、昨年はウェスタン・デジタル、シーゲート等の生産削減と解雇のニュースが地元紙のヘッドラインを飾り、シンガポールの電子産業は苦痛を伴う再編を強いられた。しかしこうした再編の中でウエハー製造やチップ・デザイン等の高付加価値産業もHDD産業の穴を埋める中核電子産業として頭角を現した。またシンガポール政府が化学産業基地として造成したジュロン島を中心に化学産業が急成長し、電子産業に取って代わる勢いを示している。
過去3年間にわたり世界的な業況不振に呻吟してきた半導体産業は、強力なチップ需要に支えられ、急速に台頭、HDDに取って代わりトップ電子輸出品の座を占める勢いを見せている。昨年11月の半導体チップ輸出は67%の増の15億米ドルと、月間ベースで初めてHDD輸出を追い越した。Chartered Semiconductor Manufacturing、System-on-Silicon Manufacturing Corp、STMicroelectronics等の新ウエハー製造プロジェクトがこうした成長を一層加速する見通しだ。シンガポールは既にチップ・デザイン・ハウス26社を擁するが、同領域への新会社の参入もウエハー製造業の成長に寄与するものと見られる。
しかし、半導体チップ産業は、化学産業が電子産業に取って代わり、シンガポールのトップ輸出産業になる趨勢を阻むことはできない。証券会社GKゴーのアナリストは8年内に化学製品輸出が電子製品輸出を追い越すものと見ている。目下化学製品輸出はシンガポールの輸出総額の20%、電子製品は60%を占めているが、化学製品輸出は過去5年間年率20%の成長を遂げてきた。
とは言え、当面シンガポールのHDD産業はより一層厳しい試練の時期を経ねばならず、業界観測筋はシンガポール拠点のHDDメーカーは現在の5社から2社に減少するものと見ている。
またシンガポール電子製品の米国の電子製品輸入に占めるシェアは1996年の11%から1999年の8%に下降、さらに昨年6月の国産非石油製品輸出の伸び率は10.3%と、フィリピンの15.3%、台湾の44.5%、韓国の50.1%に及ばなかった。しかしVickers Ballasのエコノミストは米国市場におけるシェア縮小はさして懸念するに及ばず、シンガポールは同期により多くの製品を域内市場に輸出したと指摘している。(ST:12/31)
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