1999-11-30 ArtNo.21166
◆<星>金融管理局、Sドル取引規制を一段と緩和
【シンガポール】シンガポール金融管理局(MAS)会長を兼ねるリー・シエンロン副首相は26日催された第16回アジア銀行家年次会議の席上、シンガポール資本市場の奥行きを一層拡大し、その成長を促す狙いから、1)外国企業のSドル建てによるシンガポール証取(SES)への上場を自由化、2)未だ信用格付けの行われていない外国企業や政府によるSドル債の発行を許可する等、一連の措置を導入すると発表した。
シンガポール政府は、これまで外国企業や金融機関によるSドルの貸借を厳しく規制して来たが、昨年8月に新ガイドラインを発表、条件付きでこの種の活動を認める姿勢を明らかにしていた。リー副首相がこの日の基調演説で明らかにしたところによれば、昨年8月の規制緩和以来、16の外国機関が19件のSドル債の発行を通じて30億Sドルを調達した。MASは近日中に新たな規制緩和措置を発表するとともに、不断に検討を加え、市場のニーズに応じる方針だ。
昨年発表されたガイドラインの下、営業額、利益、営業支出のいずれかの20%がシンガポールに関係している外国企業はSドル建てでのSES上場が認められたが、同条件を撤廃し、全ての外国企業に、Sドル建てでの上場を認め、MASの事前認可取得も求めない。しかしながら調達した資金はシンガポール国内の銀行に保管し、これを海外に持ち出す際は外貨に転換せねばならない。
既にSESに上場している外国企業もSドル建て取引への転換を認められる。Sドル建て取引への転換を望むSES上場の非居住企業は、12月10日までにSESにその旨申請せねばならない。この種の企業のリストとSドル建て取引への転換スケジュールは、その3日後に公表され、早ければ12月20日から最初のグループのSドルによる取引が開始される。
これは買い主による危険負担の原則に基づくもので、外国企業株を購入する地元投資家は、これらの企業が如何なるビジネスを手がけ、如何なるリスクを負うているか、自ら判断せねばならない。したがって外貨建て取引を義務づけることにより、地元投資家の投資に最早ハードルを設けない。これによりシンガポールを域内の証券取引ハブにすると言う目標に向け大きく一歩前進できる。
債券市場の自由化に関しては、外国機関のSドル債券発行に対する規制を撤廃し、信用格付けの有無を問わず、外国企業や政府がSドル債を発行することを認める。これまではSドル債を発行する外国機関は少なくとも信用等級Aの格付けが求められた。
しかし未だ信用格付けの行われていない外国企業はその債券をいわゆるソフィスティケーテッド・インベスターにのみ販売できる。ソフィスティケーテッド・インベスターは、資産規模100万Sドル以上で、過去12ヶ月の収入が少なくとも20万Sドルを超える個人、もしくは純資産価値500万Sドルを超える企業と定義される。
MASは依然として非居住者がSドル資金を海外に持ち出し、使用すること、あるいはシンガポールとは無関係なプロジェクトに用いることを認めない。このため非居住者がその取得したSドル資金を外貨に転換した後初めて海外に持ち出すことができると言う規則は維持される。
この他、非居住者によるSドル建てリパーチェス取引(REPO)の2000万Sドルの上限も撤廃される。これにより非居住者の短期資金調達が一層容易になる。
また銀行は外国機関との500万Sドルを超える取引の詳細を毎月MASに報告しさえすれば、MASの事前認可を必要とせずに非居住者とSドル建ての各種金利商品の店頭(OTC)取引を行うことができると言う。(BT,LZ,ST:11/27)
|
|