1999-11-18 ArtNo.21058
◆<星>L&Mをジャカルタ・サイバーシティ事業のオフショア拠点に
【ジャカルタ】バンク・スンマの取り付け事件で10年ほど前に、インドネシア第2の企業王国アストラ・グループを一夜にして潰えさせた未曾有の試練を克服、最近東南アジアのビジネス・サークルで再び脚光を浴びているエドワード・スルヤジャヤ氏は、目下日本政府や民間業界も抱き込んだ“ジャカルタ・サイバーシティー(44ha)”プロジェクトに取り組んでおり、シンガポールの上場企業L&Mをオフショア拠点として利用している。
サイバーシティー・プロジェクトを推進するPT Jakarta International Trade Fair Corporation (JITC)には、日本コンソーシアムJakarta Development Corporation-Japan (JDC-Japan)が42.5%、スルヤジャヤ一族に率いられるインドネシア・コンソーシアムが57.5%出資、ジャカルタ市街から6キロのクマヨラン空港跡地(450ha)にシンガポールや香港、あるいはマレーシアのマルチメディア・スーパー・コリドーに匹敵するリージョナルITハブの開発を目指している。
インドネシア側コンソーシアムに関しては、スルヤジャヤ一族が経営するPT Griya Nusantara Pratama (GNP)とサイバーシティーの建設地を所有するジャカルタ市政府(DKI)の75:25の合弁会社PT Jayanusa Pradanaが52.5%、インドネシア政府を代表するState Secretariat (Setneg)が5%を負担する。日本側コンソーシアムには海外経済協力基金(OECF)、清水建設、日商岩井、パシフィック・ペトローリアム・トレーディング、IBJリーシング、高島屋、トヨタ、NEC、三井海上保険、大阪ガス、東レ、松下電器、コーナン・ツーショー、東京電力、ミツイ・バンク(?)、三菱商事、住友商事、伊藤忠、丸紅、日本興業銀行、そごう、ヤマハ、三和銀行、新日鉄、第一勧業銀行、富士銀行、さくら銀行、大和銀行、野村証券、日興証券、東京三菱銀行、NTT、東京ガスが含まれる。(ソース:エドワード・スルヤジャヤ氏)
スルヤジャヤ氏は、最近支配権益を取得したシンガポールの建設/エンジニアリング会社L&Mを、同プロジェクトの海外販促に利用する計画のようだ。これまでスハルト元大統領の子息バンバン・トリハトモジョ氏らインドネシア・ビジネスマン・グループにより経営されてきたL&Mは、インドネシアに少なからぬビジネス・コネクションを有する。L&Mグループ経営委員会会長を務めるスルヤジャヤ氏は、L&Mはインドネシアと国際ビジネス・コミュニティーの架け橋を務め、触媒効果を発揮することができると語る。
それによるとL&Mはインドネシアのビジネス環境に関する経験と知識を用いて向こう数年間にその事業を急速に拡張することができる。例えば情報技術(IT)、保険、不動産開発を含むインドネシアの様々なビジネス機会を開拓、インドネシアの主要なプレーヤーになれる。しかしそれはエクスポージャーの意ではなく、ビジネス機会の発掘が中心になる。実際のところL&Mのインドネシアにおける直接のエクスポージャーは200万Sドルを超えない。国境を跨いだ不必要な通貨リスクを回避する上からも、必要資金はインドネシア国内で調達すべきで、インドネシアの資本市場を利用することも可能と言う。
ちなみにスルヤジャヤ氏はインドネシアの正副大統領双方と浅からぬ関係を有する。アブドゥルラーマン・ワヒド大統領との関係は、Bank Nusumma時代に遡り、スルヤジャヤ氏は当時ワヒド氏とともに、ワヒド氏に率いられるイスラム組織Nahdlatul Ulama(NU)のために農村地域の銀行網の創設に奔走した。
スルヤジャヤ氏は最近、ソロ市のMangukenegaran kingの孫Atilah Rapatriati女史と再婚したが、新婦の兄弟はムガワティ・スカルノプトゥリ副大統領の妹と結婚している。また先妻はスカルノ元大統領の養女で、同夫人は1997年にシンガポールで亡くなった。したがってスルヤジャヤ氏はムガワティ女史とは二重の縁戚関係を有する。
しかしスルヤジャヤ氏は、自分はこうしたコネを通じてインドネシア政府に特別待遇を求める考えはなく、スハルト元大統領と密接な関係を有した多くのビジネスマンが遭遇した悲劇を再演することはないと強調した。(BT:11/17)
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