SEAnews 1999-11-01 ArtNo.20882

【クアラルンプル】マレーシアのダイム・ザイヌディン蔵相は先週金曜(10/29)、所得税の1％ポイント・カットや公務員ボーナスの支給を盛り込んだいわゆる“ピープルズ・バジェット”を国会に上程したが、ビジネスに対する奨励措置はほとんど見あたらず、このためクアラルンプル証取(KLSE)総合指数(KLCI)は、この日1％ダウンした。
総選挙を前に低中所得者層に対する各種の配慮がなされており、これらには、トップ・ブラケット所得層に対する法人税率の29％への1％ポイント引き下げ（これに伴う政府歳入減M$7億）、免税所得の5000Ｓドルから8000Ｓドルへの引き上げ、被雇用者積立基金(EPF)資金の高等教育費への使用許可(額不詳)が含まれる。
またアンワル前副首相罷免事件で、亀裂が生じたとされる80万人の公務員に対しても、特別な配慮が示され、1ヶ月分、最低1000Ｍドルのボーナス支給(政府歳出負担M$13億)、公務員基本給の10％アップ、公務員住宅ローン条件の緩和等の措置が掲げられている。
ビジネスに対する奨励措置も全くない訳ではなく、製造業者に対する部品／コンポーネント輸入関税免除(来年末まで)、305品目の輸入関税率引き下げ等が掲げられ、また銀行再編／証券・保険業界の合併／債務再編を支援する上から、資産管理会社ダナハルタ及び法人債務再編委員会への支援を求める企業に対する印紙税免除／債務再編コストに対する税額控除／買収される保険会社もしくは証券会社の累積損失の50％税額控除等の措置が講じられている。
政府はまた今年の国内総生産(GDP)成長予測を1％から4.3％に上方修正したが、来年の成長予測は5％に据え置いた。
ダイム蔵相は新年度予算は国民生活の向上を支援するピープルズ・バジェットと説明したが、投資家の反応は消極的でこの日のＫＬＣＩは前日を7.33ポイント下回る742.87で引けた。ＧＫゴー・リサーチのアナリストは、「人々の期待が過大だったこともあり、市場は予算案の内容に失望している」と指摘、ＳＧリサーチのエコノミストも「マクロ経済の観点からすれば、まずまずの予算案で、エコノミストは満足したものと見られるが、証券市場にとってはさしあたり好材料はない」とコメントした。クナガＢＮＰプライム・イースト・リサーチの調査主任は「低・中所得層に対する優遇措置に照準を合わせた総選挙予算だ」と述べ、別の証券会社幹部は、「一般に期待された2％ポイントの所得税減税からすれば、達成率は半ば」と語った。
多くのアナリストは利子収入に対する税額控除、400億Ｍドルにのぼる住宅不動産市場の滞留現象解消を目指す不動産利得税のカット等を予想していたが、いずれも実現しなかった。
国会審議の終了後記者会見したマハティール首相は「自分の経験からすれば、予算案が発表された当日は、誰もがこれを歓呼するが、2日目はそれほどでなく、1週間後は糞味噌の批判を受ける。もし総選挙を今日行えば勝利するが、1週間後なら負けるだろう」とコメントした。(NST,MBT,ZTAR,ST,BT,LZ:10/30)