1999-10-26 ArtNo.20815
◆<星・香/韓・台>の違いは価値観ではなく制度の相違:上級相
【ソウル】今回のアジア経済危機の過程でシンガポールと香港が受けた打撃が、韓国と台湾に比べ軽微であったのは、両者間の制度の相違に関係しており、価値観の相違によるものではない。
シンガポールのリー・クアンユー上級相は23日、韓国工業連合会がその国際顧問団のために催した記者会の席上、以上の考えを語った。それによると韓国と台湾は企業管理や政治制度の面で日本の影響を強く受けており、これに対してシンガポールと香港は英国の影響が強い。このため西側が重視する透明度や平等な競争の機会と言った理念は元からシンガポールや香港の制度に取り入れられている。例えばシンガポールの銀行は同一系列の企業グループに偏った融資は行っておらす、このことが深刻な打撃を回避する一因になった。これに対して韓国や台湾の金融機関は深刻な打撃を受けたが、台湾の打撃が韓国に比べ軽かったのは、過去20年間に多くの留学生が米国式の経営方式を持ち帰っていたからである。
韓国人はその価値観に何ら負い目を感じる必要はないが、その制度を改める必要がある。日本はこれまで日本固有の特殊な状況を重視してきたが、国際化時代を迎え、この種の特殊状況が日本の足枷になっている。
リー氏はいわゆるアジア的価値観に触れ、「アジアの異なる民族はそれぞれ異なる価値観を有し、例えばマレーシアのマハティール首相が提唱するアジア的価値観にはイスラム的マレーシアの価値観が濃厚である」、「マハティール首相はしばしばアジア的価値観を提起するが、自分は未だかつてアジア的価値観を論じたことはない。自分が主唱するのは儒教価値観であり、西側のマスコミがこれをアジア的価値観と表現したに過ぎない」と指摘した。リー氏によれば、マハティール首相のアジア的価値観とリー氏の儒教価値観はともに集団の利益を個人の利益の上に置く点で共通しているものの、その趣旨には大きな隔たりがあると言う。
リー氏はまた、競争社会の世界における勝者は少なく、敗者復活の機会を確保することが必要と語った。一部の国にはこの種の制度が既に設けられているが、国際的には今のところ存在しない。このため国際通貨基金(IMF)や世界銀行等が率先して敗者復活の制度を設ける必要があると言う。
日本の役割に関してリー氏は、日本が核武装する可能性は少なく、米国の核の傘の下で、日本が通常兵器を用いて軍事的な役割を担う限り、東アジア諸国は大きな不安は抱かないとの見通しを示した。しかし日本が核武装するなら、最早米国に率いられる国際防衛機構の一員ではなく、独立の軍事勢力になるため、アジア諸国はその防衛戦略に根本的な見直しを加えねばならず、国際防衛機構の再構築が必要になる。リー氏自身、こうした趨勢には大きな懸念を抱かざるを得ないと言う。(ST,LZ:10/24)
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