SEAnews 1999-05-10 ArtNo.19060

【シンガポール】リー・クアンユー上級相は6日、シンガポールは今や香港を除けば世界的にも数少ない優れた銀行システムを備えた国と高く評価されているが、その実、地元銀行は谷底に墜落する瀬戸際に立たされており、国際化を受け入れ、国際水準を備えた人材を登用しないなら、10年で淘汰される運命にあると警鐘した。
シンガポール21レポートの国会審理の席上、原稿なしで討議に加わった上級相は、外人タレントの登用をあまりに強調するのは、地元人材を軽視するに等しいとする与党議員の発言に触れ、確かにシンガポールは優秀な銀行家を備えているが、現在のシンガポール銀行業の繁栄が、こうした地元銀行家の優秀さによるものと考えるなら、それは誤りであると指摘した。
現在の地元銀行の繁栄は金融管理局(MAS)のコー・ベンセン前副局長(DMD)の意見に基づき、政府が外国銀行の支店開設や現金自動預払機(ATM)の設置を制限したためである。このため地元銀行は公共住宅地の隅々まで支店網とＡＴＭ網を拡大することができた。しかし情報技術の急速な進歩や国際化の波の中で、地元銀行が引き続きこの種の経営方式を維持するなら、譬え政府がこれまで通り保護したにしても国際競争の舞台から淘汰される他ない。
地元銀行は時代の流れを先取りして、前進せぬ限り、国際競争を乗り切ることはできない。実際のところ政府がＤＢＳバンクとＰＯＳＢａｎｋを合併するまで、地元銀行はほとんど何もして来なかった。同合併後、ＯＣＢＣ(華僑銀行)がやっとマネージメントの刷新に乗りだし、ハンセン・バンクのAlex Au氏を最高経営者(CEO)に抜擢した。しかしながらＯＣＢＣのAlex Au氏にしろ、DBS BankのJohn Olds氏にしろ、全ての部門に国際水準を備えた一群の人材を配置せぬ限り成功することはできない。
シンガポールはこれまで東南アジアのセンターを目指してきたが、今やそれでは不十分で、好むと好まざるとに関わらず、誰もが国際舞台でプレーすることを求められている。
リー氏はまたＳ21報告書が目標に掲げる全員参加の社会も重要だが、最終的決定は中核となるエリート集団に委ねられる必要があると述べ、この点を理解せぬ首相は、その座を長く保つことはできないと警鐘した。
またゴー・チョクトン首相が前日提起したシンガポール族の運命共同体構想に触れ、多民族社会の一元化は不可能とは言わないが、ＤＮＡの変化はそう簡単ではなく、そのようなことを試みるのは、自ら災を招くに等しいと水を差した。(BT,ST,LZ:5/7)