1998-11-24 ArtNo.17395
◆<星>EMUレディがアジア企業の勝敗の分かれ目に
【シンガポール】アジアの銀行や企業は、1999年1月1日からスタートする欧州通貨統合(EMU)に対応して、その情報技術(IT)システムを調整せねばならないが、少なからぬ企業がY2Kバグ(従来のコンピュータ・システムが2000年以降の年号を認識できなくなる問題)に気を取られ、EMUに対する準備を怠っている。
最大の誤りは、ユーロ(Euro:EMUの共通通貨)は欧州ビジネスのみに関わる問題と言う認識で、その実、ユーロはEMUメンバーと取り引きする全ての者に影響を及ぼす。
SAPサウス・アジア・パシフィックのEdward Musiak取締役(金融サービス担当)は、アジアの銀行に選択の余地はなく、ITシステムをユーロに対応させねばならないと指摘する。
EMU加盟11ヶ国の通貨とユーロの交換レートは来年1月1日から固定され、同時点では、ユーロはこれらの諸国のローカル通貨と平行して使用されるが、2002年6月30日からはドイツ・マルクやフランス・フランは最早使用されなくなる。
Musiak氏によれば、ユーロ・レディのITシステムを有するか否かが、アジア銀行の競争の鍵になり、もしそのようなITシステムを有せぬ銀行は顧客を奪われざるを得ない。
しかしながらアジアの多くの企業や銀行は、EMUに十分関心を払っていない。少なからぬものは、Y2K対策は待った無しで2000年までに準備せねばならないが、EMUの本格的導入は2002年からで、まだ時間があると多寡をくくっている。
またアジア通貨危機の結果、アジア企業のIT予算が切り詰められ、Y2Kと同時にEMU対策を実行するゆとりがないのが現状だ。
しかしMusiak氏は、Y2K問題同様、多くの企業がEMU対策に必要な時間や労力を過小評価していると警鐘する。トムソン・ファイナンシャル・サービシズ・アジア・パシフィックのジェームズ・マルカン重役(MD/CEO)によると、EMU対策はY2K対策の5倍の労力を必要とする。何故ならY2Kバグは2桁表記の年号を4桁にするだけで済むが、ユーロは多国間通貨の換算だけでなく、その他の様々な複雑な問題を処理せねばならない。
こうしたことからMusiak氏は、古いソフトウェアをアップグレードするよりは、Y2KとEMU双方を包含したソフトウェア・パッケージに転換するよう推奨する。SAPが提供するこの種のパッケージは、古いソフトウェアを修復するのに比べ、遙かにコスト効率が良いと言う。市場調査会社IDCアジア・パシフィック幹部によると、既に少なからぬ企業がこの種の解決策を希望しており、ソフトウェア会社各社もこうしたニーズに応じるべく、対応しつつある。またEMUはインドのソフトウェア・プロフェッショナルらに新たなビジネスをもたらしていると言う。(BT:11/23)
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