1998-09-22 ArtNo.16586
◆<星>マルコポーロ、S&P不履行訴訟の先例提供も
【シンガポール】住宅不動産市況が長期にわたり低迷する中で、今後支払い不能に陥るバイヤーが少なからず出るものと見られるが、その際のデベロッパーの対応が注目されている。
多くのバイヤーは仮に60%の支払いを終えた段階で、支払い不能に陥れば、告訴され、法廷により残りの40%の支払いを命じられると恐れているが、某弁護士は、それは誤解で、デベロッパーはセールズ&パーチャス(S&P)契約を廃棄し、当該不動産を取り返した後、20%の課徴金を徴収できるだけと説明する。従って仮に既に60%の支払いが終わっていれば、課徴金を差し引いた残りの40%は返還されることになる。
しかしこうした解釈には、少なからぬデベロッパーが納得しないものと予想される。実際一部のデベロッパーは全額回収の訴えを起こすと述べている。シンガポール不動産開発業者協会(REDAS)のダニエル・テオ会頭も、「デベロッパーは告訴できると思う」と語ったが、訴訟の勝算にはコメントを控えた。
不動産取引手続きを専門に処理する弁護士は、「訴訟の先例がないのが問題」と指摘した。それによるとこれ以前にもバイヤーが支払い不能に陥るケースはあったものの、いずれも示談で片付き、告訴されたケースは少ない。実際のところ市況が活況を呈し、不動産が値上がりしていた時代には、デベロッパーは契約を破棄しても、一層の高値で当該不動産を売却できたため、問題はなかった。しかし今は全く状況が逆転し、不動産は日に日に値下がりしている。
一方、S&P契約の条文に修正が加えられ、昨年10月1日以降の取引は新契約、それ以前の取引は旧契約の方式に基づいている。旧契約では、支払いが不履行になった場合、デベロッパーには2つの選択があり、第1の選択では、契約を直ちに破棄して物件を取り戻し、20%の課徴金を徴収できる。第2の選択では、延滞利子を徴収して契約を続行、有る段階で契約を破棄して20%の課徴金を徴収する権利も留保すると言うもの。
これに対して新契約ではデベロッパーが契約を破棄して20%の課徴金を徴収したなら、それ以上の法的措置を採ることはできないと言う一項が追加されている。
つまり旧契約では、契約を破棄し20%の課徴金を徴収したデベロッパーが当該不動産を転売して損失を出したなら、依然としてその損害に関して以前のバイヤーに損害賠償を請求することができた。
マルコ・ポーロは最近アドモア・パーク・コンドミニアムのバイヤー322人に10%の第3次支払いの請求書を発送しており、その総額は2億Sドルと見積もられるが、観測筋は、これらのバイヤーの中から少なからぬ支払い不能者が出る可能性を予想している。マルコ・ポーロは支払い不能者には法的措置を採るとしており、この種の訴訟の先例になる可能性がある。しかし某弁護士は、デベロッパーらは市況低迷の折りにこの種の訴訟を起こし、不利な先例を作ることを恐れており、マルコ・ポーロも20%の課徴金徴収で示談する可能性があると評している。(BT:9/21)
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