1998-08-24 ArtNo.16204
◆<星>日本のアジア救済は勝ちすぎた期待:エコノミスト
【シンガポール】シュローダー証券(ロンドン)のエコノミスト、ラブ・カーネル氏は、アジア諸国の経済危機脱出の先導役を日本に求めるのは、過大な期待とするとともに、日本経済の復調は来年も望み薄との見通しを示した。
日本からの帰国の途次シンガポールに立ち寄ったカーネル氏がBT紙に語ったところによれば、日本の産業が突然フル稼働し、国民消費が急増するなら、確かにアジア経済に積極的波及効果を及ぼすが、それはあまりに非現実的な期待と言う。
知っておかねばならない事実は、アジアの経済危機は日本がリセッションに陥る以前に発生し、日本はその実、アジア経済危機の打撃で、リセッションに陥ったと言う点である。アジア経済危機の原因が、日本とは無関係なことから、日本がアジア経済復興の先導役を務めることができると言う論拠も薄弱である。
しかし、日本がそれ自身、深刻な問題に直面しているのは、紛れもない事実である。日本経済の最大の問題は、膨大な在庫を抱え込んでいること。日本企業は1997年下半期に、「景気は既に底入れした」との致命的な判断の誤りを犯し、その結果膨大な在庫の山を築いてしまった。
日本企業は、今年は正にこうした誤算のつけの支払いを迫られており、多くのエコノミストらが景気復調を期待する1999年についても、アジアの経済が低迷している現状では、日本経済が回復に転じる可能性は薄い。日本経済の救いがあるとすれば、欧米の高水準の需要が維持されることぐらいである。
日本に関する限り、長期的な問題解決の鍵は、政治動向にかかっており、多くの派閥が割拠する自民党政権に適切な政策を立案し、実行することを期待するのは困難と言う。
最近の参院選挙における失敗が、総選挙でも繰り返されるなら、自民党は政権を明け渡すほかないが、他に目立った野党も存在しない。自民党内部にもこうした点に危機感を抱き、真の政治改革を望む者が少なくない。これらの者は与野党の大規模な連合を組織する動きを見せており、来年当たり政府に不信任動議を突きつけるものと見られる。
総選挙で自民党が大敗を免れる道は、これまでの自民党から決別するような新機軸を打ち出し、政治改革を行うことで、日本経済再建の期待もその辺に掛かっていると言う。(BT:8/22)
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