1998-08-17 ArtNo.16116
◆<星>ヴォーゲル教授、ジャパン・アズ・ナンバーツーの悲哀指摘
【シンガポール】ジャパン・アズ・ナンバーワンの著者、エズラF.ヴォーゲル教授は、14日、「経済危機に直面するアジア諸国に対する支援面で日本が指導的役割を果たしていないとする非難は、日本に対して多少不公平の嫌いがある」と、日本を弁護した。
イースト・エーシアン・インスティテュートが主催した「近代中国に関するゴー・ケンスイ・レクチャー」で講演したヴォーゲル教授によれば、アンワル・イブラヒム、趙紫陽、胡耀邦の例からも明らかなようにナンバーツーが発揮し得る指導力には限界がある。その実、経済危機の打撃を被ったアジア諸国に対する日本の援助は、他のどの国よりも大きい。日本は昨年アジア・ファンドの創設も提唱したが、アジアへの影響力失墜を恐れる米国の反対で実現できなかった。個人にしろ、国家にしろ、ナンバーツーが指導力を発揮するのは極めて難しい。
米国、日本、中国が、揃ってアジアに影響力を発揮するのは、歴史上初めてのこと。3者は新三国時代の平和を維持すると言う願望をシェアしているが、3国関係は極めて脆弱である。これには3国の信頼関係の薄弱さが反映されている。日本は三国関係安定の面で指導力を発揮することができ、またそうすべきだが、まだそうした役割を演じていない。
3国は米中、日中、日米関係を発展させる際は、他の1国にその進展状況や意図を示し、無益な猜疑を生じさせぬよう配慮する必要がある。
また3国は第二次大戦時の旧怨を捨てるべきであり、既に日本は何度も謝罪していることから、中国は日本軍の過去の暴行を材料に国民情緒を刺激し、日本に譲歩を迫るような態度は採るべきでない。日中両国の学者は第3国の学者とともに過去の歴史に客観的な再検討を加え、その結果をそれぞれの国民に示す必要があると言う。
教授によれば、日本には決して高い素質の政治家が不足している訳ではないが、特異な政治制度がこうした政治家の精力と大部分の時間を費消させている。また日本の政界では人縁が重視される反面、指導者個人の主張や魅力はあまり注目されず、その結果、政治改革を断行する指導力を備えた政治家が登場しないと言う。(BT,LZ:8/15)
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