1998-08-12 ArtNo.16056
◆<星・香港>の危機対応の相違は異なる経済構造反映:副首相
【シンガポール】シンガポールと香港のアジア経済危機への対応の相違には、両者の経済構造の相違が反映されている。
香港の華字紙明報が10日掲載したインタビュー記事の中でシンガポールのリー・シエンロン副首相兼金融管理局(MAS)会長は以上の考えを語った。
リー副首相によれば、シンガポール・ドル(Sドル)の対米ドル相場は既に15%下降、これによりアジア通貨危機の影響は有る程度軽減された。しかし香港はHKドルの対米ドル相場を一定に保ったことから、不動産価格や株価、賃金の下降を招き、デフレを強いられた。このため多くの者が香港政庁の政策を批判しているが、その実香港には他の選択の余地がなく、固定相場制を放棄してもメリットはない。この点では香港政庁は、シンガポール政府より困難な立場に置かれている。
香港はシンガポールに比べ人口規模、中国市場へのアクセス、金融センターとしての早期離陸等の点で優位に立っている。こうした特徴は株式市場や資本市場の成長にも有利な環境を成している。
これに対してシンガポールは、金融センターとしてのスタートが遅れ、市場開放も段階的進められている。しかしシンガポールは低コスト、英語を解する労働人口、市場の多様性等の面で優勢を保っている。いずれにしてもシンガポールと香港の競争力は益々拮抗しつつある。
シンガポール経済は、今年下半期に一層の悪化が見込まれるが、シンガポールの銀行は健全さを維持、苦境に陥った企業もない。とは言え金融改革の歩調を緩めることはできない。目下外資系銀行はシンガポール国内ビジネスの4~5%のいシェアを占めるに過ぎないが、市場開放に伴い、向こう5年間に対外的圧力は増すことは有っても、軽減することはない。
一方、中国人民元の先行きは、日本の動向に密接に関係しており、日本における新政権誕生により新たな局面が開かれるよう望まれると言う。(LZ:8/11)
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