1998-08-11 ArtNo.16038
◆<星>赤字予算で不況乗り切り:首相メーデー・スピーチ
【シンガポール】ゴー・チョクトン首相は、独立33周年を祝う独立記念日の前夜(8日)、今年の経済成長率は0.5~1.5%の低成長が予測され、来年も顕著な改善は望めないとするとともに、来年も必要なら赤字予算を組んで不況乗り切りを図る政府の姿勢を明らかにした。
首相が恒例のナショナル・デー祝賀演説の中で語ったところによると、歳入の落ち込みにもかかわらず、政府は域内経済危機の影響を抑制するため、インフラの整備と国民生活に引き続き投資を行う。このため今年に続いて来年も赤字予算を覚悟する必要がある。こうした対応が可能なのは国民が30年間にわたって蓄えた準備金のおかげだが、その使用には細心の注意を払い、深刻な経済危機に関わらず、準備金を徒に費消することはできない。
今年第1四半期の成長率は6.1%だったが、第2四半期はわずか1.6%にとどまり、下半期にはさらに減速が予想される。シンガポールが現在直面している経済危機は、1985年の不況とは異なり、外的要因によるもので、また1965年の独立以来、最も厳しいものである。
近隣諸国の通貨が暴落する中でシンガポール通貨が相対的に強化、このためシンガポールの輸出品はこれら近隣諸国との厳しい競争に直面している。加えて新空港や港湾、工業団地を建設し、今や過剰供給問題に直面するこれらの国々は、各種料金の引き下げや行政・立法措置を通じて外資誘致に努めるため、このこともシンガポールの競争力に一層の圧力を及ぼしている。
競争力を維持するには事業コスト、税金、賃金を低く抑え、生産性を向上させる他なく、状況が一層悪化すれば、中央積立金(CPF)カットも選択肢の一つになる。
首相は、アジアの危機はすべてのシンガポール人にとっての挑戦だが、シンガポール人は独立当時よりもはるかに団結し、逆境への心構えができているため、自信をもって困難に立ち向かうことができると指摘した。(ST,LZ:8/9)
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