1998-06-15 ArtNo.15319
◆タイム・マガジン、<馬>首相の危機乗り切り能力に疑問
【クアラルンプル】米国の週刊誌タイム・マガジンは、6月15日付けの誌面にマハティール首相に対する特別インタビュー記事を掲載するとともに、全ての責任を自分以外の者に押しつける首相態度に、マハティール首相は果たして危機を救うことができるのか、あるいは事態を一層悪化させているのではないかと疑問を呈している。
マレーシアはマハティール首相の指導下に1人当たりの国民所得を300米ドルから5000米ドルに引き上げた。こうしたことは、誰にも真似のできない非凡な成果だが、世界情勢は通貨危機の発生を境に、一変してしまった。マハティール首相はこうした変化を決して認めようとせず、そのことがレーシアの重荷になりつつある。
マレーシアにはまだ学生デモは見られず、若手中産階級は、マハティール首相を信頼、タイやインドネシアに発生したような事態は、マレーシアには決して生じないと考えている。
エコノミストらはこれは危険な自惚れであり、今行動を起こさなければ、マレーシア経済も崩壊する恐れがあると警鐘している。某投資会社の幹部は、来年は不動産の50%の値下がりが生じ、国内貸付1200億米ドルの4分の1が不良貸付(NPL)になる恐れがあると警戒している。こうした状況下に一銀行に取り付けが生じれば、連鎖反応が発生し、Mドルの急落と一連の企業倒産を引き起こしかねない。
とは言えマレーシアには依然として挽回のゆとりがある。シンガポールのエコノミストの1人は、「マハティール首相は、アジアの他のリーダーとは異なり、ある日突然、自分の政策は誤りであったと宣言することができる特異な指導者」と指摘した。マレーシアの政治家は、あるいはタイや韓国の指導者に比べ強固な意思と忍耐力を備えておりスハルト政権より巧みに危機を乗り切ることができるかも知れない。
しかしマラヤ大学のエコノミストは、「確かに首相の発言はある種の事実を指摘しているかも知れないが、理解に苦しむことは、こうした発言によりMドルが急落しても全く意に介さないこと」と不満を表明した。(LZ:6/13)
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