SEAnews 1998-05-22 ArtNo.15007

【シンガポール】シンガポールの4月の国産非石油製品輸出は、昨年同月比1.6％下降。エコノミストらは、シンガポール経済が予想以上の速度で冷え込む前兆ではないかと懸念している。
貿易開発局(TDB)が20日発表したところによれば、製造業生産の先行きを占う指標とされる非石油製品の輸入も、3月の－1％に続き、11％下降した。4月には石油輸入も19％下降、総輸入は12％の落ち込みを見た。
ＴＤＢによると、国産非石油製品輸出のマイナス成長の主因としては、国産電子部品、特に、集積回路(IC)およびプリント基板アセンブリー輸出の成長鈍化と、ディスク・ドライブ輸出のマイナス成長が挙げられる。これら3品目だけで非石油製品輸出の45％を占めている。
一部のアナリストは、輸出不振の一因としてＳドルの対米ドル相場が1年前の1米ドル＝1.70Ｓドルから1.62Ｓドルに強化したことを指摘した。しかし大和総研のアナリストは「単なる為替レートの問題ではない。タイやインドネシアの通貨は大幅に軟化しているが、輸出の拡大にはつながっていない」と述べ、アジア自体の需要低下が、アジア経済の回復を遅らせていると指摘した。
国産非石油製品の対米輸出は17％、欧州向けは14％と、いずれも健全な成長を見たが、マレーシア向けは5％、日本向けは1.4％それぞれ下降した。
ナットウェストのアナリストは「一体、インドネシア向け輸出は、どうなっているのか」、「インドネシアの統計は発表されておらず、誰にも分からない」と嘆息した。
シンガポールの輸出業者は、大量の在庫を抱えた域内のライバルとの競争に直面しているが、Vikers Ballasのアナリストは「アジアの奇跡を当てにして、皆が製造能力の拡張を図ったあげくのクランチで、今や誰もが膨大な過剰設備と在庫を抱えている。こうした過剰が調整されるまで、危機は持続する」と語った。
アナリストらは、比較の対象になる昨年下半期の貿易が比較的好調だったこともあって、国産非石油製品輸出の低調は、今年後半も持続すると予想している。(ST,BT,LZ:5/21)