SEAnews 1998-05-13 ArtNo.14890

【北京】ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンはアジア太平洋地域本部を香港からシンガポールに移転する方針を決めた。また、ドイツ最大の銀行、ドイチェ・バンクも香港におけるビジネスとスタッフを削減、地域ビジネスの管理業務をシンガポールに移転している。
フォルクスワーゲンは、2年前に取締役会メンバーの1人Martin Posth氏を派遣して、香港にアジア太平洋地域本部を開設したが、昨年Posth氏は罷免され、香港オフィスのスタッフは削減された。フォルクスワーゲンの本社は今や香港事務所を閉鎖するとともに、ロバート・クオック氏が北京に開発したチャイナ・ワールドの1フロアーを借り切って、中国ビジネス本部を設ける準備を進めている。ＡＳＥＡＮ及びオーストラリア・ビジネスを統括するアジア本部は既にシンガポールに移転され、東京に第3の地域本部が開設された。
フォルクスワーゲン取締役会メンバーのRobert Buechlhofer氏によると、今や取締役会の5人のメンバーの内、アジアにおける反周期戦略の踏襲を支持するものは僅か1人だけになった。同社は中国で複数の新モデルの製造を計画するとともに、シンガポールと東京におけるプレゼンスの確立を目指しており、タイにPassatカーの組立工場を設ける準備を進めている。
一方、ドイチェ・バンクは最近香港の一部の顧客に関係断絶とクレジット・ラインのカットを宣告する極めて直截的な書簡を送付した。同書簡は、「アジアが目下直面する経済危機により市場や産業構造にも変化が生じた」とするとともに、同行は、こうした変化に対応して、香港支店のポートフォリオに見直しを加え、一部の顧客との関係を停止せざるを得なくなったと述べている。
ドイチェ・バンクのアジア太平洋地域業務はリー・カーシン氏の右腕と称されたサイモン・マレー氏により指揮されてきたが、今や再編が進められており、地域ビジネス管理業務はシンガポールに移転されつつある。同行は昨年香港で多額の損失を出し、10億米ドルにのぼる不良債権(大きな部分が韓国におけるもの)の帳簿抹消を強いられた。
シンガポール・ベースの新マネージメントは疑わしい顧客や同行に目立った利益をもたらさぬ顧客との関係を断ち、一部の顧客の信用枠をカットする思い切った措置を採用しており、クレジット・ラインをカットされたものには香港の指導的企業も含まれていると言う。しかしドイチェ・バンクの少なからぬ著名な顧客が、こうした措置に不満を訴えているとされる。(BT:5/12)